研究課題
特別研究員奨励費
股関節内転筋群は, 股関節運動に大きく貢献し得る解剖学的特徴を有しているが, その機能的役割は不明な点が多い. 本研究は, 股関節回旋運動における内転筋群の機能を形態および機械特性に着目して解明することを目的とする. 形態特性は, 屍体を用いて各筋の回旋モーメントアームを算出し, 機械特性は, ヒト生体を対象とし, 剪断波エラストグラフィを用いて, 各筋の受動および活動張力を解明する予定である.
昨年度、剪断波エラストグラフィ法を用いた長内転筋の弾性計測は、筋伸長に伴う受動張力変化の推定評価に有用であることを示した。本年度は、剪断波エラストグラフィを用いて、股関節角度変化に伴う長内転筋の受動張力の動態解明を目的に、股関節角度変化が長内転筋の受動的な弾性率に及ぼす影響を検証した。若年健常男性16名を対象とした。運動課題は、股関節屈曲角度が外転に伴う長内転筋の弾性率に及ぼす影響を検討した外転課題および屈曲角度が回旋に伴う長内転筋の弾性率に及ぼす影響を検討した回旋課題とした。外転課題は、伸展20°、屈曲0°、20°、40°、60°および80°にて、外転0°、10°、20°、30°、40°における弾性率を計測した。回旋課題は、伸展20°、屈曲0°、20°、40°、60°および80°にて、外転0°および40°における内旋20°、内外旋0°、外旋20°の弾性率を計測した。他動的な外転に伴う長内転筋の弾性変化は、交互作用を認め、外転0°において伸展20°と屈曲80°の弾性率の間に有意な差を認めなかった一方、外転40°では伸展20°の弾性率は屈曲80°よりも有意に高値を示した。一方、他動的な回旋に伴う長内転筋の弾性変化は、2次交互作用(屈曲×外転×回旋)および1次交互作用(外転×回旋)を認めず、1次交互作用(屈曲×回旋)を認めた。外転角度によらず、伸展20°のみにおいて、内旋20°の剪断弾性率は内外旋0°および外旋20°と比較して有意に高値を示した。本研究結果から、長内転筋の受動張力は屈曲角度に依存し、外転に伴う増大は伸展位にて大きく、さらに伸展位においては内旋に伴い増大することが示された。本知見は、股関節運動における長内転筋の機能的役割を解明する上での基盤情報となり、今後さらなる研究の発展に寄与すると考える。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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