研究課題
特別研究員奨励費
これまでの研究結果から発がんの超初期段階において、正常上皮細胞層中に生じた変異細胞が周囲の正常細胞によって排除されることが明らかになっている。しかしながら、正常細胞がどのようにして周囲の変異細胞の存在を認識し、排除しているのかその詳しい認識メカニズムは未だほとんど明らかになっていない。本研究では正常細胞と変異細胞間のメカニカルストレスを介した細胞間認識メカニズムの解明を目指す。
研究計画書に沿って、令和4年度はこれまでの以下の研究結果を論文としてまとめ、国際雑誌に投稿、掲載した。正常上皮組織にがん原性変異細胞が生じた際に、正常細胞と変異細胞との間に起こる細胞競合現象を介して変異細胞が周囲の正常細胞によって管腔側へ排除されることが明らかになっている。しかしながら、細胞競合の分子メカニズムについては多くが未解明のまま残されている。細胞競合の新規制御因子を同定するために、リン酸化SILAC (Stable Isotope Labeling with Amino acids in Cell culture )スクリーニングを行い、正常細胞とRas変異細胞の混合培養条件下で、リン酸化が亢進しているタンパク質としてAHNAK2を同定した。また免疫染色の結果、AHNAK2のリン酸化がRas変異細胞と共培養した正常細胞で上昇していることが分かった。さらにAHNAK2のリン酸化はカルシウムによって活性化されるConventional Protein kinase Cによって制御されていた。そこで混合培養時における正常細胞内のカルシウム濃度変化を調べたところ、カルシウムスパークと呼ばれるカルシウムの一過的な上昇がより頻繁に起きていることが分かった。さらにこのカルシウムスパークがAHNAK2のリン酸化を介して、上皮細胞層全体の流動性並びに変異細胞の排除を促進していることが明らかになった。さらに共同研究によって上記の培養細胞系で観察された現象がゼブラフィッシュの初期胚によるin vivo系でも観察されることが明らかとなった。以上の研究成果は、2022年7月12日に、米科学誌「Cell Reports」に掲載された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Reports
巻: 40 号: 2 ページ: 111078-111078
10.1016/j.celrep.2022.111078