配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2022年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2021年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2020年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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研究開始時の研究の概要 |
第2種超伝導体中の量子化磁束(渦糸)は, 互いに斥力を及ぼし合う多粒子系とみなすことができる。渦糸系はその制御性と再現性の高さから, 多粒子系の非平衡現象, 非平衡相転移を調べるための格好の実験系となる。本研究では, 渦糸の平均的な運動状態を観測する従来の輸送現象測定に加え, 走査トンネル分光法による渦糸運動の微視的な実空間観察を同時に行える世界初の渦糸ダイナミクス観察装置を構築する。この測定手法を用いて非平衡相転移に伴う粒子配置変化を解明することで, 非平衡物理学の発展に貢献する。また渦糸固体状態で得られた知見を固体力学に適用することで応用分野への波及を目指す。
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研究実績の概要 |
令和4年度は, 交流駆動によって起こる可逆不可逆転移(RIT)に加え, 直流駆動によって起こる動的秩序化転移についての実験も行った。 まずRITについては, 走査型トンネル分光測定で得られた交流駆動後の渦糸像に対してドロネ―解析を行い, RIT転移点近傍における渦糸配置の秩序度の変化を格子性の観点から調べた。その結果, RIT転移点に近づくと, 乱れを残しつつも格子性が増すことがわかった。また乱れを含む秩序構造の分類法として知られるhyperuniform性を評価するために密度分散と構造因子を計算し, 駆動された渦糸系におけるhyperuniform構造の検出に初めて成功した。 次に動的秩序化転移について, 特に乱れたプラスチックフローから異方的に(横方向にのみ)秩序を持つスメクチックフローへの変化を検出するために, x軸とy軸の両方向に駆動力を印加できる十字型の試料を考案し, 作製した。2段階緩和測定法, 横モードロック共鳴法および横電流電圧測定法という輸送現象測定法を独自に開発し, スメクチックフローの明確な検出と動的秩序化現象が2次の非平衡相転移であることの実証に成功した。以上の成果はPhysical Review Research誌に掲載された。 最後に, 動的秩序化転移におけるKibble-Zurek(KZ)機構を調べた。これまでのKZ機構の実証実験は平衡相転移に限られており, 本研究により初めて非平衡相転移にも適用可能であることが示された。固体力学への応用としては, 物質材料中の欠陥密度をKZ機構によって制御するという展開が考えられる。本成果の適用によって, 従来の温度に加え, 外力という新たな変数を利用した物質材料作製が期待される。以上の成果はPhysical Review Letters誌に掲載され, 同誌のEditors' suggestionに選出された。
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