研究実績の概要 |
1. 単純な主査骨格を持つ4種類の高分子{ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、ポリ(2,5- ジオクチル-1,4-フェニレン)(PPP)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MEH-PPV)}における酸化還元電位の温度係数αを決定した。αの値は、PTAAで0.02mV/Kと小さく、P3HTでは1.08mV/Kと大きな値をとることが分かった。そのため、高分子のαは顕著な主査骨格依存性を持つことが確認された。 2. モノマーに単純化して量子化学計算を行い、得られた物理量と高分子のαの相関を調べた。先ず、初年度の研究計画時にαの支配要因の候補としていた振動エントロピー差では、αの大小関係を説明できないことが分かった。他方、各原子のMulliken電荷の変化量の大きさから評価した゛活性な原子゛の数とαの間に強い相関を確認した。この相関は゛活性な原子゛と極性を持った溶媒との相互作用によって溶媒系のエントロピーが変化するためと解釈した。 3. 低分子を酸化還元対として含む溶液中で電気化学測定及び酸化還元電位の温度係数αを決定した。テトラシアノキノジメタン(TCNQ)とテトラチアフルバレン(TTF)をアセトンに溶解させた溶質・溶媒系でのαとしてそれぞれ0.50 mV/Kと0.89 mV/Kが得られた。
|