研究実績の概要 |
申請者はこれまでの研究により、神経幹細胞で強く発現するNwd1遺伝子がプリン新生時に形成される巨大タンパク質複合体「プリノソーム」の新たな構成因子であることを見出した。しかし、神経発生時のプリノソームの報告は一切なく、その生理的役割と形成メカニズムに関しても不明であった。 本年度、まずマウス胎仔脳から単離した初代培養神経幹細胞に、プリン新生酵素の1つでありプリノソームマーカーでもあるFgams-EGFPを導入することで、神経発生時にプリノソームが形成されるかを検討した。別のプリノソーム構成因子であるPaics抗体との二重染色の結果、Fgams+Paics+の顆粒状シグナルであるプリノソームの観察に成功した。また、Nwd1のプリノソーム内での役割を検討した結果、Nwd1がプリノソーム形成に関与する可能性を見いだした。さらに、子宮内胎児電気穿孔法を利用し、脳発生時のプリノソームの生理的役割をin vivoで検討した結果、神経幹細胞の増殖に重要であることを明らかにした。また初代培養神経幹細胞を用いたin vitroの実験系でもNwd1が神経幹細胞の増殖に重要であることを明らかにした。 本研究は正常神経発生過程における初めてのプリノソームの報告であり、その生理的役割として神経幹細胞の増殖に関与することを明らかにした。上記研究成果はiScience誌に論文発表し(Yamada, Sato, and Sakakibara, 2020)、国内学会(第43回日本分子生物学会年会と第43回日本神経科学大会)で2度のポスター発表を行った。 上記成果に加え、Nwd1のC末端ドメインに結合するタンパク質の探索・同定に成功したことから、現在は、さらにその結合特性・結合の生理的意義について検討している。
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