研究実績の概要 |
Cr-Rh-Ce複合酸化物が持つRhナノクラスターに対し、金属への強い配位能を有するN-ヘテロサイクリックカルベン (NHC) 配位子の配位を行うことで、Rhナノクラスターの反応場を制御し、新たな触媒機能の創出を狙った。本年度は、昨年度までに明らかにしたC-C結合形成反応への触媒活性能と触媒活性発現機構を論文として発表したとともに、本反応系に最適なNHC配位子の構造と基質適用性に関する知見を得た。 NHC配位子 (1,3-dicyclohexylimidazol-2-ylidene: ICy) に加え、新たに4個のNHC配位子 (1,3-dimethylimidazol-2-ylidene: IMe, 1,3-di-tert-butylimidazol-2-ylidene: ItBu, 1,3-dibenzylimidazol-2-ylidene: IBn, 1,3-dimesitylimidazole-2-ylidene: IMes) をRhナノクラスターを表面に形成したCr-Rh-Ce複合酸化物に修飾し、NHC修飾Cr-Rh-Ce複合酸化物触媒を調製した。これらの触媒を用い、シクロヘキセノンとフェニルボロン酸による1,4-アリール付加反応を検討したところ、ICy>IMe>IBn>ItBu>IMesの順で触媒活性が高いことがわかった。Rh K端EXAFS、FT-IR、N 1s XPSにより、どのNHCもカルベンとしてRhナノクラスターに配位していることが示唆され、中でもICyが配位NHC量が最も多く、これが触媒活性の序列に影響していることが示唆された。また、他の不飽和ケトンおよびアリールボロン酸を用いた基質適応性を検討したところ、非環状の不飽和ケトンや、電子求引性・供与性置換基を有する4-置換アリールボロン酸を用いた場合においても触媒活性を発現することが分かった。
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