配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2022年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2021年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2020年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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研究開始時の研究の概要 |
ランダムウォークの量子版として導入された「量子ウォーク」は, トポロジカル絶縁体や量子コンピュータなどとの関連性が明らかになるにつれて, 注目が集まる研究分野へと発展を遂げた.
当該研究では, 80年代に"超対称性の破れ"を調べる方法として導入された「Witten指数」の文脈で, 数学的に厳密な離散時間量子ウォークの指数定理の構築を目指す. 量子ウォークのWitten指数は, 連続時間Dirac作用素とのアナロジーによって, 模型のFredholm性が破綻するケースでは半整数となって現れる事が予想される. この解析的指数を用いて量子ウォークの物理的な性質を探る事が本研究の目的である.
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研究実績の概要 |
【研究実績】 昨年度に発表したカイラル対称性を持つ量子ウォークの指数に関するarXivプレプリントが, 今回Reviews in Mathematical Physicsにアクセプトされた. この類の量子ウォークの特徴は, 超対称的量子力学で「超対称的ハミルトニアン」として知られるエルミート作用素の組を自然な形で定義できるという点である. これらに対して, 「Witten指数」と呼ばれる不変量を定義できるという事実はよく知られている. 先行研究では(離散時間)量子ウォークの時間発展作用素がスペクトル・ギャップを持たないケースが中心に考察されていて, その場合はWitten指数をFredholm指数として数学的に特徴づける事ができる. 一方, 今回発表した論文ではスペクトル・ギャップを持たない具体的な1次元モデルを考察しており, その場合に散乱理論を経由する形で先述のFredholm指数を半数値指数まで拡張することに成功した.
【今後の研究の展開】 既知の量子ウォークの整数値指数に関する結果を半整数値Witten指数まで拡張するというのは, 当該研究計画の最大の目標であった. 最終年度でこの数学的な目標を無事に達成する事ができた一方で, 幾つかの新しい課題も浮き彫りになった. 例えば, 当該研究の物理的な重要性に関しては, 時間的な制約の関係で十分に吟味できたとは言い難い(例えば, 指数の半整数値性とレゾナンスの存在の関連性など). また, Witten指数の幾何学的な特徴づけに関しても部分的な結果しか得る事ができなかった(例えば, バルク・エッジ対応との関連性など). これらの未解決問題は, 令和5年度の新規採択課題23KJ1868「量子ウォークのスペクトル流: 散乱理論における新しい不変量の研究」の重要なモチベーションである為, 次年度以降も継続して研究を進める計画である.
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