研究課題
特別研究員奨励費
新規バレル型環状オリゴチオフェンリガンドはナノ粒子を広範囲にわたって規則的に配列する。本研究では、これまでに築いた合成手法を駆使してこのバレル型環状オリゴチオフェンリガンドの汎用性を高めた上で、それらを用いたナノ粒子構造体による新しい光・電子デバイスの創成を目指す。このバレル型環状オリゴチオフェンリガンドは、これまでのリガンドには存在しない軸性キラリティー・酸化還元特性という化学構造上の大きな特徴を有する。有機分子の特性を無機ナノ粒子に転写し、高効率発光材料を中心とする基礎科学的検討から実際のデバイス作成までが本研究の目的である。
構成する分子がラセミ体であるにもかかわらず、光学活性を有する超分子ポリマーについて研究を進めた。エナンチオピュア溶液を段階的に混合してラセミの溶液を得た。すると、光学純度の低下とともに光学活性が増強され、0%eeの際に円二色性シグナルが最大化するという新現象を発見した。原子間力顕微鏡観察や分子動力学シミュレーションによって、複数本の交互ヘテロキラル超分子ポリマーからなる一方巻きの多重らせんを形成することで光学活性が生じることが判明した。種重合を用いた詳しい調査の結果、偏った鏡像異性体比の溶液中で光学活性な核ができ、その末端から一方向巻の超らせんが生成することが示唆された。目下、この研究の論文化を進めているところである。さらに類縁体を用いることでエナンチオピュア溶液であっても超分子重合が進行することを見出した。円二色性スペクトルを用いた詳しい調査の結果、この類縁体は、これまでの分子と異なり、ホモキラルでのみ重合が進行することがわかった。これは分子の軽微な差異により、立体選択性がスイッチされる点で興味深い。エナンチオピュアで重合されたこの超分子ポリマーは、モノマーでは見られなかった強い蛍光を示す。これは分子分散の状態では、分子内振動によって励起状態から非輻射過程により基底状態へ遷移するためであると考えられる。キラルな集合体であることから円偏光発光特性を調査したところ、高効率の円偏光発光を示すことが判明した。この点についても論文化を進めているところである。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
Journal of the American Chemical Society
巻: 144 号: 16 ページ: 7080-7084
10.1021/jacs.2c02176
Science
巻: 376 号: 6594 ページ: 738-743
10.1126/science.abd0966
Chemistry An Asian Journal
巻: - 号: 10
10.1002/asia.202200223
J. Am. Chem. Soc.
巻: 143 号: 13 ページ: 5121-5126
10.1021/jacs.1c00823