研究課題
特別研究員奨励費
細菌群集の安定性は医療や農業といった様々な分野から注目されている。しかし、群集が安定となる条件については示されてきたものの、その予測は未だに難しい。本研究は、近年開発されたEmpirical Dynamic Modellingと呼ばれる、短い時系列データから群集ネットワークを再構築する解析手法を元に、群集動態の予測および安定性指標の予測を試みる。
本研究では、細菌群集動態にしばしば見られる急激な変化を、生態学の理論を踏まえて予測を行った。野外環境下、実験環境下の両方において、細菌群集の組成は急激に変化することが報告されてきた。生態学において、急激な変化は (1) 安定状態間の遷移、(2) 高次元アトラクタ内の大きな状態の移動があげられる。特に(1) においては、生物群集の安定性を定量することで、遷移がしやすいかどうかを判断することが可能となる。近年において、(1)と(2)を前提においたEnergy landscape analysisとEmpirical Dynamic modellingと呼ばれる手法が提案された。そこで、生態学理論の枠組みをとらえることができるそれら2つの手法を用いることで、群集の変化メカニズムの理解、それを踏まえた群集動態の予測を行った。予測を評価するためには、反復のある様々な条件を比較する必要がある。そこで、それぞれ8個の反復を持った6つの異なる処理をほどこした、のべ48の細菌群集を設計し、110日間の時系列データを取得した。この時系列データに対して、Energy landscape analysisとEmpirical Dynamic modellingを適用し、安定性を定量して群集の変化量と群集組成が半分以上変化した時間点の予測を行った。その結果Energy landscape analysisから算出した安定性は変化量、大きな組成の変化点をある程度予測できることが示された。一方で、Empirical Dynamic modellingの安定性は、予測精度はよくないものの、大きな変化がおこる時の閾値について見ると、不安定となる理論値に相当した。以上の結果から、生態学理論を用いることで群集動態の予測を行えることが示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Microbiome
巻: 11 号: 1 ページ: 63-63
10.1186/s40168-023-01474-5
Frontiers in Microbiology
巻: 14 ページ: 153952-153952
10.3389/fmicb.2023.1153952