研究課題/領域番号 |
20J23404
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
張 彩薇 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2022年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2021年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2020年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 台湾近現代史 / 台湾史 / 植民地史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は戦後の台湾人による反植民地主義運動を究明するものである。 今日一般に、台湾は「親日」的という表象が氾濫しているが、その「戦後」はほとんど理解されていない。日本から国民党政府の統治は台湾人にとっては植民地主義の連続であること、そしてその連続に対する台湾人の「再解放」運動が展開されたことは顧みられていない。 かような一面的理解の背景には、国共内戦・冷戦構造下で「中華民国/中華人民共和国」のどちらを正当な中国とみなすかが国際社会の関心であり、そのはざまで植民地主義を問う台湾人は黙殺されてきた状況がある。だがそれゆえに、台湾人への着目は、冷戦と植民地主義の関係性を明らかにする可能性を有している。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本による植民地支配から「解放」された後も、国共内戦・冷戦構造に組み込まれ、その下で植民地的構造がなお継続している台湾において、植民地主義からの完全なる解放として、台湾、中国、香港、日本、東南アジア、そしてアメリカなど広い範囲に渡って展開された「台湾再解放運動」の軌跡を明らかにすることである。そのために、わたしはこれまで「台湾再解放運動」を展開した台湾の知識人、廖文毅を中心として、戦後初期、主に1950年以前の廖文毅における台湾自治・独立運動の思想と実践を見てきた。 2022年度は、これまで新型コロナウイルスで叶わなかった海外調査がようやく実現できた。1950年代以降、廖文毅を中心として、東京で台湾共和国臨時政府が樹立されたが、2022年度前期は台湾でのフィールドワークの成果として、その機関紙『台湾民報』のほか、日本関西地域の独立運動関連の雑誌を入手した。 後期は廖文毅の出身地である雲林県西螺鎮でフィールドワークを行い、廖文毅およびその家族が通った公学校の学籍簿を手に入れた。また、廖文毅一家は西螺の長老派教会と深い関わりを持っているため、西螺長老派教会や廖家関係者へのインタビューも行なった。 これら新しい史料を通して、1950年代以降における廖文毅の運動の発展のみならず、運動の背後にある植民地経験と地域の関係を掘り下げることによって、廖の思想と実践に対するより深い考察が可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでは新型コロナウイルスの影響でフィールドワークが叶わない期間が長く続いた。新しい史料を手に入れられない状況が続いたため、本来の計画より研究の進捗の遅れが見られる。2022年度はようやくフィールドワークを再開することができ、研究をさらに進展させる新資料を発掘することができたが、それを研究成果に練り上げるためには本来の計画よりもう少し時間がかかる。
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今後の研究の推進方策 |
新しく手に入れた史料を分析し、2023年度に教育史学会編『日本の教育史学』に投稿する予定である。また、それと並行して、『台湾民報』を利用して、戦後台湾独立運動におけるジェンダーをめぐる権力関係についての論文も発表する予定である。
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