研究課題/領域番号 |
20K00013
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
|
研究機関 | 三重県立看護大学 |
研究代表者 |
安部 彰 三重県立看護大学, 看護学部, 教授 (60516847)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 身体拘束(抑制) / 看護倫理 / 医療倫理 |
研究開始時の研究の概要 |
医療における身体拘束(抑制)は、一般病床等で日常的におこなわれており、社会問題化しつつある。 たしかに拘束を規制する法律やガイドラインは存在するが、現状ではその解釈ふくめ、「いかなる目的や方法であれば拘束は許容される(されない)のか」は必ずしも明確ではない。 そこで本研究では、拘束の倫理的論点を「拘束の目的(理由)」をめぐる諸論点と「拘束の手段(方法)」をめぐる諸論点とに大別したうえで、規範的検討を基軸としつつ、医療における身体拘束の倫理的論点の網羅的・体系的な検討をおこなう。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、医療における身体拘束の是非をめぐる規範的検討を基軸に据えつつ、その倫理的論点を網羅的・体系的に検討することにある。 2023年度は、前年度に続けて国内の関連文献を収集し、あらためて身体拘束の倫理(学)的論点の再検討と整理をおこなった。主な成果は以下のとおりである。 (1)国内の関連文献リストの増補。本リストは研究終了時にHP等で公開し、研究資料としてひろく活用に供する予定である。 (2)あらためて身体拘束における重要な倫理(学)的論点とかんがえられたのは、インフォームド・コンセント(以下「IC」)の問題である。まず現状では診療科の別を問わず、原則的に患者本人への身体拘束(開始前)のICは義務化されている。またその所以は、身体拘束が患者に身体・精神的苦痛や尊厳の侵害をもたらす可能性の高い重大な医療行為だからである。しかし、そのICの方法は倫理的に問題含みである。すなわち、現状では身体拘束の説明は入院時等に口頭または(かつ)書面(同意書)をもちいてなされている。しかし口頭説明の実態は不明だが、書面(同意書)による説明は、拘束が必要とされる状況と拘束の方法はしめしているものの、やはり文章だけでは患者はいざ拘束されたさいの具体的な自己イメージを描きにくいであろう。したがって、この方法では、「拘束される」という状態がそもそもどのような経験であり、またその経験がいかなる身体・精神的なダメージをもたらすのかを、患者が十分に理解することはむずかしい。しかるに先行研究においてもこれまで、かかる身体拘束のICの問題は必ずしも主題化されてきたとはいいがたい。このような状況は、ICが、それなくしては重要な医療行為が成り立たないという意味で医療の根幹にかかわる重要な手続きであるという事実をふまえるならば、やはりあらためて身体拘束における重要な倫理(学)的論点であるといわざるをえない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記の自己評価とした所以は遺憾ながら今年度も本研究の成果を公にするにいたらなかったからであり、このように研究を計画的かつ着実に進めることができなかったことは偏に私の不徳による。
|
今後の研究の推進方策 |
さらに1年の研究延長許可を経て研究5年目をむかえる2024年度の課題は、(1)研究成果の公表。(2)国内の関連文献の収集および精査の継続。(3)国内外の関連分研究の収集および精査、以上3点である。 (1)については、学術書の分担執筆をつうじて研究成果を公表する予定である。それ以外にも、専門学会での報告・論文投稿など、さまざまな機会および媒体を活用して研究成果を公表したい。(2)については、前年度同様に進めていく。 (3)については、前年度も研究課題に挙げつつ、十分な成果をえるに至らなかったため、今年度はその遅れを取り戻したい。 また以上の課題遂行にあたり、今年度も引きつづき、勤務先大学において研究成果を反映させた授業をおこなうことで、本研究にたいする批評を得る機会を確保し、その精度をさらに高めていく。
|