研究課題/領域番号 |
20K00017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
千葉 清史 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (60646090)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | カント / 形而上学 / 認識論 / 超越論的観念論 / 実在論 / 反応依存性 / 国際共同研究 |
研究開始時の研究の概要 |
L. アライスとT. ローゼフェルトは、カントの「超越論的観念論」を、色をはじめとする二次性質とのアナロジーを用いることで実在論的に解釈することを提案した。彼らの解釈はカント解釈としては非常に説得的ではあるものの、いまだ「カント解釈としての正しさ」を追求する段階にとどまっている。本研究は、彼らの解釈を着手点としつつも、狭義の「カント解釈」を超えて、そのような解釈方針のもとでカントに帰されるような「カント的実在論」を、現在においても理論的魅力を持ち得るような哲学的立場として彫琢することを目指す。そのために本研究は、今日の分析形而上学・価値論等において提起されている「反応依存性」理論を援用する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、まず今までの研究成果を公表する準備を進めた。11月開催の日本カント協会第48回大会では、「超越論的実在論と反応依存性 再訪」と題した研究発表で、二次性質のアナロジーを用いたカント的「超越論的観念論」の実在論的解釈のうち、とりわけLucy Allaisのものを取り上げ、それがどのような立場であり、とりわけそれがどのような反応依存性理論に帰着するか、ということを考察した。ただ、本発表の質疑応答を経て、Allaisの立場は容易な仕方では反応依存性理論に対応させられないこと、とりわけ、この考察の際に「傾向性」の形而上学についてのより十全な考察が必要なことがわかった。また、(1) 同様の実在論的解釈のもう一つのヴァージョンであるTobias Rosefeldtのものがジョンストン型の反応依存性理論に陥り、それゆえに、彼が志向しているような実在論を十分に実現できない、ということを示す考察、ならびに(2)「反応依存性」概念そのものについての研究(2022年度)の成果の公表のための準備を進めた。後者の成果の一部は、2024年5月開催の日本哲学会第83回大会で発表が決定している。 しかし、(2)の考察を進めるにあたり、「反応依存性」概念には、今まで本研究が想定してこなかった問題があることがわかってきた。とりわけ、「傾向性」の形而上学の現代における展開も視野に入れた上での考察が必要だとの示唆が得られたことは、本年度の研究の重要な成果だと言える。 また、5月5・6日には、ボン大学(ドイツ)のMarkus Gabriel氏らと共に(日本からは大河内泰樹(京都大学)、長坂真澄(早稲田大学)、硲智樹(広島大学)各氏のご協力をいただき)、国際シンポジウム“Kantian Philosophy, Nature and New Realism” を早稲田大学で開催することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今までの成果を公表するための準備に予想以上の時間がかかり、また準備中に、「反応依存性」概念の定式化について今までには想定できていなかった問題がいくつか見つかったため、研究が予定通りには進まなかった。予定されていた《Donald Davidsonの反-懐疑論的議論を反応依存性理論として再解釈する》という作業については、ほとんど前進が見られなかった。とはいえ、本研究の今後の修正・改善の示唆が得られたことは成果の一つだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、まず「反応依存性」概念の定式をめぐる問題、また、「傾向性」についての諸理論と「反応依存性」概念の関連についての考察を行ない、これについて成果を公表するべく準備を進める。また、RosefeldtならびにAllaisの立場について、最終的な評価を下すための準備を進め、これも何らかの仕方で公表すべく準備する。その上で、Donald Davidsonの反-懐疑論的議論を反応依存性理論として再解釈することを試み、こうして再解釈された反応依存性理論と、「カント的実在論」の接合を試み、本申請研究を完成させることを目指す。
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