研究課題/領域番号 |
20K00020
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
伊勢 俊彦 立命館大学, 文学部, 教授 (60201919)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 動物倫理 / 個体主義 / 人称性 / 種差別主義 / 個体性 / 物質循環 / 歴史的不正義 / 語りと対話 / 応答責任 / 言語論 / 戦時性暴力 / 証言 / 傷つきやすさ / 日常性 / 回復 |
研究開始時の研究の概要 |
日常の思考と行動が依存する、他者を含む世界についての予期が裏切られる事態は、人間の「傷つきやすさ(vulnerability)」を露呈させる。こうした事態は、思考や行動の足場を失わせ、思考や行動の主体としての地位を危うくする。本研究は、この状態からの回復の過程を哲学的に考察する。より具体的には、身近な他者との関係、自然的・物理的環境との関係、社会的な環境との関係に区分して、日常の思考や行動が安んじて依存する基盤の喪失を経験する個人や集団に課せられる負荷とその克服の条件を分析・整理し、DVや虐待、自然災害、政治的暴力や武力紛争からの人間の回復という現代的課題への取り組みに接続することを目指す。
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研究実績の概要 |
これまで、人間の思考と行動の基盤となる日常的了解の揺らぎをもたらすものとしては、病気・障害、戦争や自然災害等の非常事態を想定してきた。これに対して、研究の過程で浮かび上がったのが、われわれの日常的了解自体の中にある境界線を再検討し、疑問に付すことから、それを組み換え、思考と行動の基盤を更新する可能性である。より具体的に言えば、それはわれわれとわれわれにとって他者的なものとの関係を問い直すことでなされる。その中でも23年度は、人間と人間以外の動物との関係に注目し、脱個体的な観点を導入することを構想した。それによる研究の成果は、エマヌエーレ・コッチャの『メタモルフォーゼの哲学』(勁草書房 2022)の議論を検討する形でまとめ、応用哲学会大会および京都生命倫理研究会で発表することができた。また、とくに経済動物に対する取り扱いの改善を個体の権利や善に対する配慮とは異なるしかたで考える道筋を模索する過程の中間的なまとめを日本倫理学会ワークショップの提題の形で行い、論文化したものが『豊田工業大学ディスカッション・ペーパー』に掲載された。こうした成果を踏まえ、われわれと他者の関係をより原理的な次元で捉え直すという課題が提起される。それは、一人称の「私」と、私に語りかけ、私が語りかける二人称の存在、また、一人称、二人称の関係の外にある三人称の存在がその関係とどうかかわり、場合によっては一人称、二人称、三人称の境界が変化することの考察に導く。こうした原理的考察によって研究全体のまとめを行う展望が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍による研究交流の困難に続き、研究代表者の病気により研究活動休止の期間が1年以上にわたった。再開後も、準備不足のため順調に研究を遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、個人の死に直接関わる問題として、もっぱら自然災害による死、それに伴って特に近親の人々が経験する喪失を想定してきた。これに対して歴史的不正義の問題からは、紛争や抑圧的政治支配の中で引き起こされる死と喪失の問題が提起される。また、自然界の物質循環からの観点からは、個人の死は特別な意味を持つのか、持つ場合にはどのような意味を持つのかが改めて問題となる。これに加えて、個人の生の限界にかかわる原理的問題として、一人称の主体と二人称の他者、そして三人称の世界の区別と関係がそもそもいかにして成立しているかがある。こうした課題を念頭に、学会等での口頭発表や論文のまとめを行うとともに、立命館大学内外の研究者とも連携し、単独ないし共同でのセミナー開催等を通じて、研究計画の推進を図る。
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