研究課題/領域番号 |
20K00030
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 専修大学 (2021-2022) 新潟大学 (2020) |
研究代表者 |
宮崎 裕助 専修大学, 文学部, 教授 (40509444)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | テレパシー / 共同体 / 啓蒙 / コミュニケーション / 集団心理学 / 共通感覚 / 共感 / エンパシー / 歴史的判断力 / ピューリタニズム / ポピュリズム / カント / デリダ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、共通感覚論の再解釈に基づき、「テレパシー」と呼ばれるべき概念によって現代倫理学の新機軸を打ち立てることを目指す。共通感覚の概念には、アリストテレス以来、「五感に共通の感覚」と「他者との共通の感覚」という二つの系譜がある。とくに後者は、人々の共同体感覚(同胞感情)として重要な公共的含意をもつ。しかしこの概念は、従来シンパシー(共感)やエンパシー(感情移入)のような統合的な感情原理として理解され、集団感情の衝突や暴走がもたらす現代の諸問題に充分に答えられていない。そうした課題に答えるべく、本研究は、カント美学および共通感覚論の再編を基盤とした「テレパシー(遠隔感情)の倫理学」を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究の第3年度となる2022年度の研究実績は、主に以下の二つの視点から「テレパシー倫理」にとって不可欠な諸論点および発展的な視点を解明したことにある。
第一に、フランスの哲学者ジャック・デリダのフロイト論を介してテレパシー的な共同体論の可能性を考察した。ここでいうテレパシーは、現代のコミュニケーション・メディアの発達によって新たなコミュニティの実現を推進するどころか、ますます不可能にする。これはむしろ、共同体の紐帯となるはずの共感が、言語やその他さまざまな媒体(メディア)の介在によってあらかじめ歪められ寸断されており、いかに共同体が閉じないか、共同性として閉じることができないかを探究するものだろう。 これはたんなる悲観論ではない。コミュニティの達成それ自体を不可能にするこうした言語的媒体は、透明化したり取り除いたりすることが望ましいような夾雑物や異物としてあるわけではない。そうではなく、そうした「異物」を通してこそ、私たちのコミュニケーションは、コミュニティ(共同体)を、積極的に閉じないようにすることができる。これはつまり、当のコミュニティに既存の仕方ではない未来を残しておくための必要なチャンスとして、そうした媒体がつねに必要であり続けるのだということである。(論文「共感の共同体論再考」『精神分析のゆくえ』所収)
第二に、こうしたテレパシー論の背景をなす思想が歴史的にみて、啓蒙の概念との関係でどのような射程をもつのかを検討した。とりわけ二人のドイツの哲学者マックス・ホルクハイマーとテオドール・アドルノの『啓蒙の弁証法』の洞察が、20世紀のフランス思想(とりわけミシェル・フーコーとジャック・デリダ)にいかなる仕方で引き継がれ、呼応しているのかを見た。(論文「来たるべき啓蒙への問い──フランス現代思想と『啓蒙の弁証法』」『『啓蒙の弁証法』を読む』所収)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第3年度は計画通り、デリダのテレパシー論の関連著作、ならびに20世紀の解釈の精査と検討に従事したうえ で、テレパシー概念の思想史的な射程と概念的展開を見通すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
過去3年間の実績に基づき、文献調査、論文執筆等の作業を中心に着実に推進することにより、引き続き研究を継続し、最終年度の仕上げをしたい。
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