研究課題/領域番号 |
20K00041
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
堀田 義太郎 東京理科大学, 教養教育研究院野田キャンパス教養部, 准教授 (70469097)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 差別 / 抑圧 / 推論主義 / ヘイトスピーチ / 従属化 / 哲学 / プロファイリング / 社会的意味 / 社会集団 / 従属 / 言語哲学 |
研究開始時の研究の概要 |
2020年度は、上記計画の(1)英語圏の差別論の総括および、ヘイトスピーチ・差別語に関する哲学的議論の検討を行う。 2021年度は、これら研究をまとめて『差別の哲学』(仮)の執筆に充てる。 2022年度は、差別論を平等主義理論との関係で理論的に位置付けるとともに、種差別その他の応用諸問題の研究を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は本研究課題にとって三つの進捗があった。(1)レイシャル・プロファイリングの不当性について、統計的差別の不当性も含めて、行為の意味として同定する議論の検討を行った。(2)ヘイトスピーチを推論主義で分析するL・ティレルの議論の検討を通して差別の意味を推論的正当化・是認として把握する可能性を示した。(3)マイクロアグレッション概念についてデラルド・スーの著作の紹介と検討を行い、個々の行為を他の諸行為との関係で評価する視点の重要性を再確認した。 (1)では、マイノリティに対するレイシャル・プロファイリングの(非マイノリティへのそれに比した)特段の不当性を集団に対する害に求めるB・アイデルソンの議論の限界を確認し、アンドレアス・モゲンセンによる抑圧への寄与説を支持する立場から、行為集合が相互に正当化し合うこと自体に問題を見出す仕方でこれを再解釈した。 (2)では、ティレルの議論を基礎として、ヘイトスピーチおよび蔑称に関する近年の議論展開を、差別や差別発言をめぐる日本の諸議論に接続し、推論という観点の意義を確かめた。 (3)は、マイクロアグレッション概念を理解する最も重要な核が、既存の他の諸行為・言説との関係性にあることを再確認し、そこでも推論という見方の意義を示した。マイクロアグレッションは、当該集団を貶め二級市民化するような他の諸行為・状況から切り離して見ると、単発の暴言や侮蔑、些細な侮辱行為や発言との違い全く不明になり、この点が、現代的レイシズムや現代的セクシズムを考える上でも重要であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
延長申請を行ったことにより本研究の中核に当たるヘイトスピーチを通して差別を考えるという当初の課題に取り組むことができ、また推論という観点の有意義さを確認したことで、社会的マイノリティへの差別の特質――社会的意味――を考察する上で重要な観点を固めることができたと考える。 また、差別に関連する具体的な問題であるレイシャル・プロファイリング、統計的差別そしてマイクロアグレッションといった概念について、各々考察を行うことで差別とヘイトスピーチの哲学という本研究課題を全体として完成させる各論となる部分にも一定の成果を得た。また、応用問題として障害者差別に関して「社会モデル」をめぐる二つの解釈の対立点を再検討することができた。障害者差別論そのものの検討には程遠いが、その端緒となる考察を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は最終年度として、これまでの研究成果を取りまとめる単著として『差別の哲学』の執筆に取り組む。 本年度の新たな研究課題は「抑圧」または「従属化」を差別との関係で明確化することであり、現在先行研究の検討を行っている。ソフィア・モローの「従属への寄与」説とヘルマンの社会的意味説の接合可能性をすでに示しており、推論という観点から、これらを一貫した仕方で説明する枠組みを提示することができると考えている。 具体的な差別事象としては障害者差別の考察が残るが、性急に結論を出そうとするよりもまずは理論的な枠組みとして差別の哲学を完成させたうえであらためて取り組む予定である。
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