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誕生肯定の視点による反出生主義哲学の批判的かつ超克的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K00042
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分01010:哲学および倫理学関連
研究機関早稲田大学

研究代表者

森岡 正博  早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80192780)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
研究課題ステータス 交付 (2020年度)
配分額 *注記
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワード誕生肯定 / 反出生主義 / 生命の哲学 / 生命倫理
研究開始時の研究の概要

本研究は、「生まれてこなければよかった」という考え方を肯定する「反出生主義」の哲学を、「生まれてきて本当によかった」という「誕生肯定」の視座から批判し、乗り超えていく道を探るものである。反出生主義は、「人生の意味の哲学」の領域において、近年もっとも注目を集めているものである。申請者が提唱してきた「誕生肯定」の概念を用いて、この反出生主義に対して批判的に取り組んでいくのが、本研究の独創性である。研究手法としては、分析哲学的な概念研究と、思想史的な文献読解を二本柱とする。海外の研究者たちと連携しながら、このテーマを議論するための国際的なプラットフォームを形成し、成果は著書・論文として刊行する。

研究実績の概要

反出生主義の研究を順調に進めることができた。まず、単著として『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩選書)を刊行した。この本では、反出生主義を誕生否定と出産否定から成ると定義し、その源流を古代ギリシアと古代インドに探った。古代ギリシアではテオグニスらの詩人たちが誕生否定的な思想を歌い、後のヨーロッパ思想に大きな影響を与えた。古代インドではウパニシャッドや原始仏教において輪廻における再生からの離脱という意味での反出生主義が提唱され、実践された。19世紀のショーペンハウアーはこれら二つの潮流を合体させ、われわれは存在しないほうが良かったという独自の反出生主義を提唱した。彼はまたすべての人間が子どもを産まないことを肯定的に捉えていた。
20世紀になって人類の絶滅を提唱する思想が登場し、21世紀に反出生主義という言葉が登場した。本書ではこれらの流れを詳述したのち、今日の反出生主義の提唱者の一人であるベネターの誕生害悪論を「存在」と「生成」の観点から哲学的に検討し、その論理が成立していないことを示した。また、私がかねてより提唱している「誕生肯定」の概念をさらに一歩進めて検討した。
同書刊行後に、インターネットを中心とした日本の反出生主義者たちと意見交換を行ない、現代の反出生主義の考えを収集した。また見落としていた文献を読み、同書を補う論文として「反出生主義とは何か―その定義とカテゴリー」を刊行した。この論文で、反出生主義を「ギリシア型の原―反出生主義」「インド型の原―反出生主義」「20世紀以降の反生殖主義」に分類し、「反出生主義とは、「すべての人間あるいはすべての感覚ある存在は生まれるべきではない」という思想である」と定義した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究が順調に進み、反出生主義に関する単著1冊、論文2本を刊行することができた。当初の計画以上に進展したと考えられる。

今後の研究の推進方策

今後の研究は以下のように進める予定である。まず第1年度で達成できた反出生主義の詳細な研究を英語に翻訳し、海外のオンライン学会等で発表していく。発表学会としては、バーミンガム大学で開催される国際宗教哲学会、プレトリア大学でオンライン開催される人生の意味の哲学国際会議などを予定している。テーマとしては、反出生主義の誕生否定の精神が一種の宗教的な境地と考えられるのではないかという点、そしてハンス・ヨーナスの人類存続命法論と反出生主義の関係はどのようになっているのかという点を考えている。また、誕生肯定の概念を「可能世界解釈」と「反―反出生主義解釈」の両面から考察してきたが、その論点を人生の意味の哲学におけるナラティヴ解釈と照らし合わせて、どのような差異があるのかを研究する。また、反出生主義の国際的運動体として反出生主義インターナショナルがあるが、彼らと接点を持つことができたので、国際的な運動体としての反出生主義を研究の視野に入れていきたい。研究成果は適宜論文の形で刊行し、国際的な場面で発言していきたいと考えている。

報告書

(1件)
  • 2020 実施状況報告書

研究成果

(7件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [国際共同研究] バーミンガム大学(英国)

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] デイヴィッド・ベネターの誕生害悪論はどこで間違えたか ― 生命の哲学の構築に向けて(12)2021

    • 著者名/発表者名
      森岡正博
    • 雑誌名

      現代生命哲学研究

      巻: 10 ページ: 1-38

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 反出生主義とは何か ― その定義とカテゴリー2021

    • 著者名/発表者名
      森岡正博
    • 雑誌名

      現代生命哲学研究

      巻: 10 ページ: 39-67

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] 善から悪が生成されることは悪なのか?―ベネター型の反出生主義が孕む内在的陥穽の研究2020

    • 著者名/発表者名
      森岡正博
    • 学会等名
      応用哲学会第12回年次大会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] What Is Birth Affirmation?: The Meaning of Saying ‘Yes’ to Having Been Born2020

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Morioka
    • 学会等名
      Third International Conference on Philosophy and Meaning in Life
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 生まれてこないほうが良かったのか?2020

    • 著者名/発表者名
      森岡 正博
    • 総ページ数
      368
    • 出版者
      筑摩書房
    • ISBN
      9784480017154
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [図書] Philosophy and Meaning in Life Vol.2 : Interdisciplinary Approaches2020

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Morioka (ed.)
    • 総ページ数
      133
    • 出版者
      Journal of Philosophy of Life
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2021-12-27  

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