研究課題/領域番号 |
20K00045
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
森 芳周 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (70367928)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 死亡胎児 / 中絶 / 死産 / TRAP法 / 移植法 / 胎児組織 / 死産児 / 流産児 / 遺伝子検査法 / 出生前診断 / 生命倫理 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は、死産や流産、中絶などで生じる死亡胎児の取り扱いについて、倫理的に正しい方法を検討するものである。日本では妊娠4か月以上の死亡胎児の場合は、墓地埋葬法や死体解剖保存法の規定によるが、妊娠4か月未満の死亡胎児の場合は、研究利用や処分の仕方に関して明確で、細かく定めた法律はない。しかし、これまでの研究によると、親の希望による埋葬や、亡くなった胎児に命名する権利を法律で定める国もある。日本でも研究利用の観点や、親へのケアの観点から、より適切な取り扱いが求められる。どのような取り扱いが倫理的に適切であるのか、そして他の国々はどのような取り扱いを定めているのかを調査・研究する。
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研究実績の概要 |
2023年度当初は、死亡胎児の研究利用に関して他機関の研究グループに参加し研究動向についての知見を得ること、スイス連邦政府報告書の検討を計画していた。これらの計画は予定どおり実施することができた。さらにアメリカにおける死亡胎児の処分についての議論の調査も行った。以下に、2023年度の研究実績の概要を記す。 (1)前年度から引き続き、他機関が主体となっている研究グループに参加し、諸外国における胎児組織の提供、収集、保存、分配のあり方についての知見を得た。この研究の一環として、スイス・ローザンヌ大学の研究者から胎児組織の収集・利用方法、倫理的問題、市民からの反応などの聞き取りをオンラインで実施し、その成果を研究会で報告した。 (2)前年度準備をしていた、2017年発行のスイス連邦政府報告書「流産児の身分登録手続きの改善」の内容の検討を実施し、論文を執筆した。この中で、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツが2000年に入ってから法律や規則の改正を行い、一定の週数や体重を超えた死産児には親の希望により命名などを認めていることが判明した。また、欧州人権裁判所において死産児の取り扱いが訴訟となっていることもわかった。 (3)アメリカでいわゆるTRAP法(中絶そのものを禁止するのではなく、中絶提供者を標的として中絶規制を行い、実質的に女性が中絶を受けることを制限しようとする法律)がいくつかの州で制定されており、その一つとして、中絶胎児の埋葬又は火葬を医療機関に義務づけるインディアナ州法を検討し、論文を執筆、投稿した。中絶胎児の埋葬又は火葬を義務づける州法は、インディアナ州だけではないため、アメリカ各州の関連法令の調査をさらに進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で申請当初の計画から変更したが、変更後の計画としていたスイス国内の法令の調査、死亡胎児の研究利用に関するスイスの研究者からの聞き取り、英語圏の死亡胎児の埋葬、命名に関する法令の調査を順調に実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、前年度実施した調査をさらに進めるとともに、亡くなった胎児の倫理的な処分のあり方に関して日本国内やアジア諸国における死亡胎児の供養や女性のケアの観点からの研究を実施する。 まず、スイス連邦政府報告書についての論文をもう1本発表するために、関連文献を入手し読み進め、年度内に論文を執筆する。次に、アメリカにおけるTRAP法のうち中絶胎児の埋火葬を義務づける州法が制定されている州を調査しその内容を明らかにする。関連する文献もデータベースでリストアップして読み進める。日本及びアジア諸国における死亡胎児の供養や、流産、死産に対するケアのあり方については、関係者からの聞き取りや、研究者からの報告のための研究会を実施することにしている。
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