研究課題/領域番号 |
20K00047
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐久間 秀範 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (90225839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 玄奘 / 摂大乗論無性釈 / 仏地経論 / 成唯識論 / 瑜伽行唯識思想 / 摂大乗論 / 唯識三十頌 / インド瑜伽行唯識思想 / ヴァラビーのスティラマティ / 堅慧 / 安慧 / 中国唯識教学 / 日本法相教学 / 註釈家スティラマティ |
研究開始時の研究の概要 |
「研究の目的」で述べるように、玄奘が帰国後に漢訳した文献を、翻訳順序に従って梵本・蔵訳と対比することで、玄奘の帰国当初の思想内容が、彼の思想の転換期の内容を経由してどのように中国唯識教学・日本法相教学に変貌するのかの過程を明確にすることで、玄奘あるいは玄奘門下がインド特にナーランダーにおける瑜伽行唯識思想をどのように中国化し、どのように護法説を創作したかの究明を行うことが研究の概要である。
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研究実績の概要 |
玄奘は翻訳家であって、彼自身の思想を彼の翻訳した文献によって考えることは難しいと考えるのが自然である。ところが彼の翻訳した文献の中で『摂大乗論』無性釈、『仏地経論』および、後の中国唯識教学の正当説の基盤となる『成唯識論』に玄奘の思想的変遷を見ることができる。このことを研究代表者の私が確信したのは、『仏地経論』のチベット語訳と玄奘の漢訳との比較考察を行ったことにある。 『摂大乗論』無性釈のチベット語訳と玄奘の漢訳との間に、思想内容上大きな隔たりがあることを指摘したのは袴谷憲昭である。『摂大乗論』無性釈の玄奘の漢訳には、後の中国唯識教学へと繋がる重要な思想内容が見られる。その部分はチベット語訳に存在しない玄奘自身による付加である。同様のことが『仏地経論』のチベット語訳と玄奘の漢訳との間にも見られ、玄奘がチベット語訳にない思想内容を多く付加している。しかも『仏地経論』では、『摂大乗論』無性釈の玄奘訳で付加された思想内容を修正していることが判る。『仏地経論』の付加部分の思想はまだ荒削りであり、それがさらに10年後に中国唯識教学の正当説を述べる『成唯識論』で発展的に展開されていることが判る。 本科研の研究では、『仏地経論』のチベット語訳と玄奘の漢訳との精度の高い比較対照を進めてきており、一年延長した2023年度には成果として公にできる見込みである。しかし、『摂大乗論』無性釈と『成唯識論』との比較検討をするに当たっての重要な部分で、この分野の専門的研究者と対面で意見交換をするなど、文献だけでは察知できない部分があり、課題を残すことになった。これが現時点での研究実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『仏地経論』のチベット語訳と玄奘の漢訳との比較対照に集中した作業をほぼ完了した。これは長年代表者が続けてきたものでもあるので、一人でも可能であった。ところが『摂大乗論』無性釈のチベット語訳と玄奘訳の比較考察と、『成唯識論』との思想的発展の内容を吟味するには、私以外のインド唯識および中国唯識教学の専門家との共同研究が欠かせないものである。海外出張を含めた現地調査が全くできなかったためために、この部分が大幅に遅れている。これらの三つの文献のインドと中国との比較考察は玄奘の思想的変遷を考察する上では重要なものである。これを最終年度となる2023年度に行い、本格的に玄奘の思想を探り当てる下準備を整えることを、本研究の成果目標とすることにした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度には、5月に東方学者会議において現在の研究成果をシンポジウムという形で発表する。5人のシンポジストによって、玄奘の思想に関連する内容をインド・中国・日本に跨がって幅広く発表する。 さらには、新型コロナのために制限されていた海外渡航が緩和されるこの時期に、玄奘の思想を知る上で貴重な情報が存在するインドおよび周辺地域への現地調査、および玄奘が中国から出発する前の中国国内での動向、中国へ帰国した後の玄奘の動向を訪ねる現地調査のうち、可能な現地調査を行うことにする。あわせて、この研究に寄与する研究者と直接対面で代表者の研究成果を確認することにする。
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