研究課題/領域番号 |
20K00051
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堂山 英次郎 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (40346052)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | インドラ / トゥリタ・アープティヤ / リグヴェーダ / ヴェーダ散文 / マハーバーラタ / 神話 / アヴェスタ / ブラーフマナ / ゾロアスター教 / 英雄神 / インド / イラン |
研究開始時の研究の概要 |
古代インドの英雄神インドラは、古くは大蛇退治など多くの偉業の担い手として讃えられ絶大な人気を誇ったが、時代とともにその絶対性と人気は失われ、他の神々の活躍の中に埋没してしまう。こうした「波乱万丈」の変遷をたどり、他の神々に比類なきほど多彩な特徴や神話に彩られたこの神は、一体何者なのか? 本研究はこれに答えるため、広範囲のサンスクリット語文献群に見える神話や記述に基き、インドラの位置づけや役割を多角的に考察し、この神の実像とその通時的変遷に迫るものである。
|
研究実績の概要 |
前年度までの研究により、インドラの実像の解明とその通時的変遷という本研究全体の目的は、インドラ神話を闇雲に集めるよりも、資料が豊富なサンプル神話またはモチー フを、古い文献から時代順に追い、話の系統や変遷の仕方を明らかにすることで大きく進展するとの見通しが立った。そこで本年度は、前年度末に扱った、インドラまたはトゥリタ・アープティヤなる英雄がヴィシュヴァルーパという魔物を倒す神話の研究を様々な形で拡大して分析することに注力した。 まず、2023年9月にフランスで行われた国際ヴェーダ学会では、前年度に行った本神話に関する資料の範囲と分析を拡大し発表した。その際、トゥリタの「祭官王」的側面に注目し、インドラとトゥリタ両方が魔物退治をする話の背景に、戦士インドラと祭官トゥリタとの協力関係が潜む可能性を示唆した。 次に、2024年3月に行われたシンポジウムでは、この神話の変遷過程に迫った。特に、同神話のマハーバーラタ版を詳細に分析することで、ヴェーダ散文からマハーバーラタにかけての伝承と変容のあり方を探った。その結果、二重の殺害者という枠構造は保たれている一方で、特定のヴェーダ学派の神話が利用されてマハーバーラタの神話へとつながっていることが明らかになった。 以上と並行して、別のサンプル神話として、やはりリグヴェーダからヴェーダ散文を経て叙事詩へとつながるナムチ殺しの神話についての資料収集を始めた。ここには、本来全く別の神話であるヴリトラ(蛇)殺しの神話が重なり合う過程を見ることができ、次年度に通時的研究としてまとめたいと考える。 その他、引き続き、資料が時代的にもジャンル的にも広がりを見せるインドラ神話を収集した。また、これまでに採取・読解したインドラ神話の内容を整理・分類し、モチーフや系統別に類型化を試みた。アタルヴァヴェーダやイラン語の資料については特に進展はなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に引き続き、本務校での役職に伴い管理運営の仕事に大幅に時間を割かざるを得なかったことが、研究(特に論文執筆)がやや遅れている主な理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度から若干軌道修正したように、最終年度である今年度も、リグヴェーダを始めとするサンヒター文献、ヴェーダ散文文献、および叙事詩に跨るようなサンプル神話を中心に、インドラに関する神話を収集・読解・分析する。 中でも、前年度に扱ったインドラとトゥリタ・アープティヤの神話と関連して、同様にこの両者が関わっている可能性のある海難救助の神話を扱う。これはインド・イラン共通時代に遡る神話であり、アヴェスタにも同様の神話が見られる。インドとイランで中身や登場人物が変わるため、両者の原型、類似と相違、そしてそれぞれの変遷過程について整理し、インドラがこの神話の中でどのような役割を果たしたのかを考察する。その成果は、2024年8月に行われる国際神話学会で発表予定である。 更にもう一つのサンプル神話として、インドラによるナムチ退治の神話の分析を行う。この神話もリグヴェーダからヴェーダ散文、マハーバーラタへと広がりを見せる。特に、伝承の過程で、ヴリトラ殺しの神話と混ざり合ったり、またヴィシュヴァルーパ殺しと繋げられたりと、他の魔物退治の神話との関係性という意味でも、インドラ神話の変遷の重要な資料になると考えられる。 その他、引き続き集めたインドラ神話の整理・分類と、モチーフや系統別の類型化も進めると同時に、これまで予定しながら余り進んでいない課題にも時間を取りたい。中でも、祭式におけるイン ドラ儀礼の特質の調査と、ゾロアスター教聖典『アヴェスタ』におけるダエーワの性質の調査は、インドラの性質を浮かび上がらせる間接的な資料になりうる。それらにある程度の目鼻が付けば、これまでの全ての研究結果も併せて最終年度の総括に挑みたい。場合によっては、研究の一年延長も視野に入れている。
|