研究課題/領域番号 |
20K00056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片岡 啓 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (60334273)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | シャーリカナータ / ミーマーンサー / 文意 / 言語哲学 / 意味論 / 聖典解釈学 / クマーリラ / シャーンタラクシタ / Vakyarthamatrka / Prakaranapancika / Salikanatha / 文意論 |
研究開始時の研究の概要 |
インドの古典語であるサンスクリット語で記された紀元後900年頃の哲学文献『文意の源』を主な資料として、インドで展開された言語哲学(特に文意論)を文献学的な手法によって明らかにするのが主目的。そのために、インド内外の写本図書館から蒐集した写本複写に基づいて、サンスクリット原典の批判校訂版を作成する。さらに、思想内容に多くの人がアクセスできるよう、校訂本作成と同時並行で訳注を作成し、今後の研究発展に資するよう配慮する。以上の堅固な文献学的成果の上に、インド哲学における文意論の発展について思想史の再構成を図る。原典校訂・訳注・個別論文を国内外の雑誌に具体的な成果として発表する。
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研究実績の概要 |
紀元後900年頃に展開するインド言語哲学の展開、その前提に踏み込んだ研究を中心に行った。500年~800年の諸資料を用いた研究成果を発信できた。インドにおける言語哲学の前提として宗教的権威の問題がある。仏陀の説法や全知を論題とする聖典解釈学と仏教との論争、その理論展開を、クマーリラ、マンダナ、シャーンタラクシタといった、シャーリカナータに先行する諸学匠を中心に跡付けた。研究室の雑誌、九大の紀要、東大の紀要、全国誌に個別論文を英文で公刊している。また、国際ダルマキールティ学会において発表するとともに、国際サンスクリット学会においては、海外に散らばる聖典解釈学の研究仲間とパネルを開催し、自身は、マンダナの『命令の分析』を主資料として「全知のアポリア」を取り上げた。またウィーンの研究所から出た論文集にも成果を公表できた。さらにRoutledgeのハンドブックにも成果を公表している。北海道大学では、聖典解釈学の基礎的な理論綱要書『聖典解釈学概説』の研究会を講師としてリードし、テキストと和訳(本邦未訳)を準備した。また、シャーリカナータの文意論に密接に関係する議論として、ヴェーダ学習命令が問題となる。プラバーカラ、ウンベーカ、シャーリカナータの議論を整理し、一部は写本に遡りチェックした。最終成果に繋げる準備を整えることができた。シャーリカナータの影響を受けた直後の学匠として重要であるスチャリタミシュラについては、ウィーンにおける研究会において、仏教との論争を中心に緻密に読み解く機会を持つことができた。シャーリカナータと同時代と目されるニヤーヤ学派の学匠であるジャヤンタについては、筑波大学での研究会で、これまでの研究を俯瞰する発表を行うとともに、討論術という視点から言語哲学の一展開を見直すことができた。年度内の成果は、英語論文6本の公刊、2本の国際学会発表、1本の全国学会発表である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍のため延期となっていた二つの国際学会が、ようやく2022年度に開催された。8月の国際ダルマキールティ学会と、1月の国際サンスクリット学会である。いずれも発表を行うことができた。また、北海道大学で9月に行われた研究会では、聖典解釈学の綱要書の和訳を準備するとともに、対面・オンラインの双方で多くの国内の若手を指導し、聖典解釈学ミーマーンサーが持つ言語哲学の可能性について、本邦における普及に努めることができた。また、国内のみならず、海外に向けても、英語論文6本の成果を発信することができた。昨年度からの発展として、シャーリカナータの著作については、文意論と密接に関連する章について、その前史となる他学匠の諸著作も含め、テキストの構造分析など、緻密な読解作業を進めることができた。オーストリア科学アカデミー研究員である斉藤茜とは、シャーリカナータの『文意論』におけるマンダナミシュラの平行箇所について、10月にウィーンで行われた研究会において、細かい跡付け作業を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
シャーリカナータの文意論の前史・後史については、諸学匠の理論展開を引き続き多角的に追っていく予定である。すなわち、クマーリラ、マンダナ、ウンベーカ、スチャリタといった聖典解釈学者の諸著作や、ニヤーヤ学派のジャヤンタの主著『論理の花房』である。同時に、言語哲学の前提となる宗教的権威や聖典の問題については、仏教との論争箇所について、細かい跡付け作業を引き続き行う必要があると考える。また、前年度に明らかとなった『プラカラナ・パンチカー』の諸章構成の問題について、新たな視点から、関連する諸章の位置付けや役割を見直す必要を感じている。特に、ヴェーダ学習命令についての諸学匠の解釈は、文意論の応用問題として重要であり、聖典解釈学史再構成のひとつの試金石となると考えている。クマーリラ以後の展開、すなわち、プラバーカラ、ウンベーカ、シャーリカナータにおける展開を追っていく予定である。
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