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中国をめぐる知の形成と環流――在華宣教師とオランダ中国学を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 20K00062
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
研究機関大東文化大学 (2021-2023)
立教大学 (2020)

研究代表者

新居 洋子  大東文化大学, 文学部, 准教授 (10757280)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
キーワードバタヴィア技芸科学協会 / 世界史教科書 / 知の環流 / 典礼論争 / シノロジー / 金石学 / 王光祈 / クーラン / 在華宣教師 / 康熙帝遺詔 / ティツィング使節団 / フランス東インド会社 / スペイン王立フィリピン会社 / 賭博禁止の訓諭 / フランス道徳教育における中国情報 / 康煕帝遺詔の欧文翻訳と伝播 / シノロジー内外 / フランス道徳教育 / 清朝皇帝の訓諭の欧文翻訳と伝播 / 国際中国学 / オランダ中国学 / 清末外交官
研究開始時の研究の概要

明清時代の在華宣教師は、中国をめぐるさまざまな知を発信した。これらの知はカトリック圏の内外で広く流通し、とくにオランダはその吸収と再発信の拠点であったと思われる。この点を解明するため、オランダ商館長ティツィングの手稿群を出発点とし、そこに含まれた在華宣教師の報告の内容や、それらをティツィングが利用した背景、これらの手稿群をヨーロッパ中国学者が継承していく経緯に焦点を当てる。さらに、中国からヨーロッパへという単線的な伝達のみならず、清末にオランダへ赴いた外交官銭恂に関する档案などの分析を通して、中国から宣教師を経てヨーロッパへ発信された知が、オランダを通して中国へ環流した可能性を含めて追究する。

研究実績の概要

第4年度目にあたる23年度は、おもに「研究の目的」に挙げた【3】と【4】に関する事例を調査し、【5】にも取り組んだ。
【3】に関しては、新居が研究分担者として参加し22年度で終了した基盤研究(C)「フランス・アカデミーの総合的研究」の書籍化にあたり、オランダ植民地バタヴィアに1778年に設立されたバタヴィア技芸科学協会について調査し、協会発行のオランダ語『紀要』の読解に取り組むなかで、この協会が「北京の宣教師たち」との協力関係の構築を模索していたことが分かり、これを手掛かりとして、在華宣教師と非カトリック圏ヨーロッパとのつながりを示す記述を調査した。
さらに、在華宣教師によって中国をめぐる膨大な知がヨーロッパへ伝播し、またヨーロッパ内で流通するようになった大きな契機と考えられる典礼論争が、本邦の明治時代以来の東洋史・世界史教育のなかでいかに取り扱われ、とくに教科書や概説書等で流布している「康熙帝がイエズス会以外の修道会の宣教を禁止した」なる認識が、史料や本邦における代表的な先行研究と異なっているにも関わらず、いかにして現在まで継承されてきたのかについて検証を行った。その結果は大東文化大学東洋研究所共同研究班の研究会でも発表した。
また【4】に関しては、昨年度パネリストとして参加した「近代日本と西洋音楽理論」シンポジウムの書籍化が進められることになり、改めて20世紀初頭にクーラン(Maurice Courant)がフランス語で著した中国音楽研究書を調査し直した。そして彼がとりわけ朱載イク『楽律全書』の研究を通して中国音楽の多声性と独自性をいかに示そうとしたのか、そしてクーラン著がいかに1930年代における王光祈の中国音楽観の変化に作用したのかについて検討し、草稿を仕上げた。
【5】に関しては、22年度に立ち上げたアジア交流史研究会を継続し、充実した議論を行うことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

23年度は、史料の発掘という点では少なからぬ収穫があったが、もともとコロナ禍明けに予定していた海外での史料調査を行うことができなかった。そのおもな理由として、8~9月に調査を予定していたが、急遽7月末に手術を受けることになり、術後の体調回復のためもあって9月の秋学期開始までに渡航がかなわかったこと、また新居が介護にあたっている高齢家族の生活環境が大きく変化したため、その対応に多くの時間と労力を割かざるを得なかったことという2点が挙げられる。
しかし年度の後半では、これまでの研究の成果を整理して論文に仕上げることができただけでなく、そのなかで新たにさまざまな関連史料を発見することもできた。とくにオランダ語史料は本研究課題によって核心ともいえるもので、その読解に大変苦労しつつも集中して取り組むことができたのは前進である。
また本研究課題を進めるなかで典礼論争の歴史的重要性をますます強く感じているが、本邦の世界史教科書および各種概説書における「典礼問題」関連の叙述についてかねてより抱いていた疑問に正面から取り組み、関連史料を1つ1つ見直したうえで問題化できたことは、単に本研究課題の進展という面のみならず、研究成果の社会への還元という面でも意義があると考えている。
さらに22年度に立ち上げたアジア交流史研究会もほぼ毎月1回開催を続けることができ、韓喬宇、劉洋、中越亜理紗、兪昕ブン、韓朝建、木下慎梧、砂田恭佑、鎌田満希、呉政緯、呂雅瓊の各氏に発表を依頼し、充実した議論を行うことができた。
以上の進捗状況を総合して「やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

最終年度となる24年度は、以下の点を中心に研究を進める。
①これまでの研究の結果を活字化する。これに関しては、上述した「近代日本と西洋音楽理論」企画(代表:西田紘子・仲辻真帆の両氏)、「フランス・アカデミー」科研(代表:栗田秀法氏)の2企画の書籍化が進められ、新居も執筆参加しているほか、23年度に口頭発表した「教科書等における『典礼問題』観」も、24年度に『山川歴史PRESS』と『東洋研究』という2つの媒体に分けて活字化する予定である。加えて英語での活字化にも向けて動いている。
②コロナ禍および上述の事情により、これまで行うことができなかった海外での史料調査を行う。ハーグ国立公文書館、オランダ王立図書館、ライデン大学図書館などのオランダ各機関、台湾中央研究院、故宮博物院などの台湾各機関を中心に、18世紀から20世紀初頭までのヨーロッパ中国学の形成と展開、および同時代の渡欧中国人に関する史料調査を行う。
③アジア交流史研究会を継続する。この研究会を立ち上げられたことは、本研究課題の大きな成果である。小規模ながら、これまでほぼ毎月1回の開催が定着し、国内と海外の若手研究者の研究交流の場としての機能を発揮していると感じている。研究テーマの近い者同士が切磋琢磨するのと同時に、研究分野の違いを越えて大きな問題意識を共有し、将来の共同研究の構想を育てることができる場として、今後も継続していきたい。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (36件)

すべて 2024 2023 2022 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件) 図書 (4件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (15件)

  • [国際共同研究] 台湾・中央研究院/台湾・台湾大学(その他の国・地域)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [国際共同研究] 東京大学/立教大学/津田塾大学(日本)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [国際共同研究] オックスフォード大学(英国)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 景教の中国伝来はヨーロッパでどのように語られたのか――ヨーロッパ・シノロジーと清代金石学の接触2023

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 雑誌名

      人文科学

      巻: 28 ページ: 33-49

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 交流の現場へのまなざし:明清時代の中国と西欧との文化交流をめぐる研究史と課題2022

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 雑誌名

      中国史学

      巻: 31 ページ: 135-151

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「移動(しないこと)」からみる中国をめぐる知の編成――シノロジーとその外2021

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 1012 ページ: 22-30

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 歴史の真正性をめぐる論争のなかの『書経』2020

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 雑誌名

      ユリイカ(偽書の世界:ディオニュシオス文書、ヴォイニッチ写本から神代文字、椿井文書まで)

      巻: 52(15) ページ: 212-219

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 中国の教会の過去と現在を訪ね歩く2020

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 雑誌名

      月刊みんぱく

      巻: 517 ページ: 10-11

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] 教科書等における「典礼問題」観 :その形成および史料との比較2024

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 学会等名
      東洋研究所共同研究班第10班「インド洋が取り結ぶ東西交流の諸相に関する研究」研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Translating the Margin: European Translations of the Last Testament of the Kangxi Emperor2023

    • 著者名/発表者名
      NII Yoko
    • 学会等名
      Annual Conference, Association for Asian Studies
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 中国知識人における西洋音楽理論と 『中国音楽』2023

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 学会等名
      日本音楽学会支部横断企画「近代日本と西洋音楽理論」第一部「近代日本と西洋音楽理論―超領域的展開の試み」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 従<世界>的観点反思<哲学史>2022

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 学会等名
      西方哲學的東漸、中國的哲學的西進
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 在華宣教師グラモン (Jean Joseph de Grammont、1736-1812) について2022

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 学会等名
      「18世紀オランダ東インド会社の遣清使節日記の翻訳と研究」研究会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 清の学問と権力──梅文鼎『学暦説』をめぐる考察──2021

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 学会等名
      日本18世紀学会第43回大会・共通論題「学問・芸術の制度と『自由』:18世紀におけるアカデミー、大学、官僚機構」
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 康煕帝遺詔の欧文翻訳とその伝播2020

    • 著者名/発表者名
      新居洋子
    • 学会等名
      満族史研究会第35回大会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 啓蒙思想の百科事典(新居洋子「18世紀中国と啓蒙」)2023

    • 著者名/発表者名
      日本18世紀学会・啓蒙思想の百科事典編集委員会(編)
    • 総ページ数
      692
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      9784621307854
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 岩波講座 世界歴史 第12巻:東アジアと東南アジアの近世 15~18世紀(新居洋子「西欧に伝達された康熙帝の死」)2022

    • 著者名/発表者名
      弘末雅士・吉澤誠一郎(責任編集)
    • 総ページ数
      324
    • 出版者
      岩波書店
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] 論点・東洋史学:アジア・アフリカへの問い158(新居洋子「清時代のカトリック宣教――現地社会との接触の実態およびその意義とは」)2022

    • 著者名/発表者名
      吉澤誠一郎(監修)
    • 総ページ数
      378
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] 洋学史研究事典(新居洋子「西学」)2021

    • 著者名/発表者名
      洋学史学会(監修)
    • 総ページ数
      516
    • 出版者
      思文閣
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [備考] researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/kak10757280en

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書 2021 実施状況報告書 2020 実施状況報告書
  • [備考] 大東文化大学・教員情報

    • URL

      https://dtbr1.acoffice.biz/dbuhp/KgApp?kyoinId=ymdmgmymggy

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 第15回・アジア交流史研究会(劉洋氏・中越亜理紗氏)。2024

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 第16回・アジア交流史研究会(韓喬宇氏)。2024

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      2023 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 第8回・アジア交流史研究会(呂雅瓊氏)。2023

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      2023 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 第9回・アジア交流史研究会(呉政緯氏)。2023

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  • [学会・シンポジウム開催] 第10回・アジア交流史研究会(鎌田満希氏)。2023

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      2023 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 第11回・アジア交流史研究会(砂田恭佑氏)。2023

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  • [学会・シンポジウム開催] 第13回・アジア交流史研究会(韓朝建氏)。2023

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  • [学会・シンポジウム開催] 第14回・アジア交流史研究会(兪昕ブン氏)。2023

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  • [学会・シンポジウム開催] 第4回・アジア交流史研究会(張凱氏)2023

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  • [学会・シンポジウム開催] 第5回・アジア交流史研究会(黄イェレム氏)2023

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  • [学会・シンポジウム開催] 第6回・アジア交流史研究会・特別講演会(祝平一氏)2023

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      2022 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 第1回・アジア交流史研究会(Wang Wenlu氏)2022

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      2022 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 第2回・アジア交流史研究会(川本佳苗氏)2022

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 第3回・アジア交流史研究会(殷晴氏)2022

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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