研究課題/領域番号 |
20K00063
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 皇學館大学 |
研究代表者 |
松下 道信 皇學館大学, 文学部, 教授 (90454454)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 道教 / 内丹道 / 道蔵 / 道蔵輯要 / 道蔵未収文献 / 北斗経 / 吉田神道 / 吉田兼倶 / 伊藤東涯 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、書誌学的な手法を意識的に用いることにより中国近世期に展開した道教の内丹道に対する新知見を獲得し、道教研究における資料活用に関する新たな展望を提示することを目指すものである。 すなわち、道教研究で基本資料とされる『道蔵』および『道蔵輯要』の持つ資料の限界を踏まえ、それらに未収の道教文献を用い、これまで知られていなかった幾つかの成書年代や入蔵時の編集方針の一端を明らかにする。こうしたことにより最終的には、道教研究における『道蔵』や『道蔵輯要』未収資料の積極的な活用の有効性を示す。
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研究実績の概要 |
本研究は、書誌学的な手法を用いることで中国近世期に展開した道教の内丹道に対する新知見を獲得し、道教研究における資料活用に関する新たな展望を提示することを目指すものである。すなわち、道教研究で基本資料とされる『道蔵』及び『道蔵輯要』の持つ資料の限界を踏まえ、それらに未収の道教文献を用い、最終的には、道教研究における『道蔵』や『道蔵輯要』未収資料の積極的な活用の有効性を示すことを目的とする。 この目的を遂行するに当たっては、当初、中国・台湾各地の図書館に所蔵される、『道蔵』『道蔵輯要』未収の内丹道関連文献の各種版本の書誌学的調査を行うことを計画していた。しかし、令和2年度以来のコロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行により、中国や台湾での調査は長らく不可能な状態が続いた。その後、令和4年度後半には状況はやや好転したことから、実際に台湾中央研究院傅斯年図書館を訪問し、資料調査を行った。また、令和5年度には、同図書館から取り寄せていた資料が到着し、資料調査を開始した。 海外調査ができなかった時期に進めていた天理大学附属図書館所蔵吉田文庫所蔵『北斗経』の調査については、令和5年の論文発表に続き、令和6年3月に吉田文庫所蔵『北斗経』の翻刻を刊行した。これは、吉田文庫所蔵『北斗経』と、『道蔵』所収本、そして、蔵外に残る北斗経の三系統の北斗経を校勘した校注である。これにより、従来、一般に閲覧が困難であった吉田文庫所収『北斗経』が容易に見られるようになり、研究者の便に大いに資するものと思われる。更にこれに加えて、これまで知られていなかった北斗経関連資料の発見により、本研究で提起した、吉田兼倶改作説は成り立たないとする仮説は正しかったことが論証されることになるものと思われる。これについては、令和6年度中に調査結果を発表報告することとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、『道蔵』と『道蔵輯要』それぞれに関係する文献資料の書誌学的調査や、中国各地の図書館に所蔵されて残る、『道蔵』未収の内丹道関連の各種版本の書誌学的調査を研究内容の中心に位置付けている。 本研究が開始した令和2年から令和4年にかけて、コロナウイルス感染症の流行により海外で調査を行うことは不可能であった。本研究は海外の資料を元に行うことを計画していたため、本研究は開始当初からかなりの遅滞を強いられることとなった。しかし、コロナウイルスの流行がある程度終息に向かい、海外渡航が可能となったことから研究状況が好転し、令和4年度末には台湾での現地調査を実施することができた。さらに、令和5年度は台湾中央研究院傅斯年図書館に依頼していた資料の複写の到着により、ようやく実際に資料を調査に着手することができた。 また、吉田文庫所蔵『北斗経』に関する研究成果については、令和4年度の論文発表に引き続き、令和5年度中に翻刻を公刊することができた。これに加えて『北斗経』及び『北斗経』関連文献についての調査も順調に進展していることから、それまでのやや遅れ気味であった進捗状況は全体的に持ち直し、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると言えるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究期間は、本来、令和4年度までの予定であったが、前回1年の延長が認められたのに引き続き、今回更に1年の再延長が認められ、令和6年度まで継続して研究を行うことが可能となった。 本研究は、道教研究における資料活用に関する新たな展望の提示を目的としている。このため、中国や台湾など諸地域の図書館に収蔵される、『道蔵』『道蔵輯要』未収の関係文献の書誌学的調査を一つの研究の柱として据えていた。コロナウイルス感染症の世界的な流行により調査は難航を極めたが、令和5年度には台湾の傅斯年図書館所蔵の資料が到着し、実質的な調査を開始することができた。また、国内で予備的に始めた北斗経関連の調査の進展が順調に進展した。他方、当初の計画では、中国における資料の残存状況についても調査を予定していたが、一年ごとの延長で長期的な計画が立てづらく、今回は断念せざるをえなかった。こうしたことから、最終年度である令和6年度は、台湾における調査及び日本国内の調査結果を中心に研究成果の総括を目指すこととする。 具体的には、台湾中央研究院附属傅斯年図書館から入手した複写資料を用いて、『道蔵』内の関連する書籍との比較を中心に分析を進め、発表報告を目指す。 また、日本国内に残る道教関連文献である吉田神道所伝『北斗経注』の調査については、令和4年に『道蔵』所収本との関係についての論考を発表し、また、令和5年度には基礎資料としての翻刻及び校注の公刊が既に完了している。これを受け、令和6年度は、これまで知られていなかった北斗経資料に基づき、令和4年の論考で示した仮説を実証し、更に北斗経関連文献との関係まで考察を広げることにしたい。 こうした研究成果を踏まえ、最終的には、道教研究において根幹とも言える、『道蔵』『道蔵輯要』の資料活用に関する新たな展望の提示につなげることにしたい。
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