研究課題/領域番号 |
20K00068
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池澤 優 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90250993)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 死生学 / 東アジア / 宗教性 / 応用倫理学 / 生命倫理学 / 宗教学 / 環境倫理 / 生命倫理 / 死生観 / 宗教観 / スピリチュアリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、死生学や応用倫理など、通常は価値中立的な“学術”とされている分野に、宗教的な思想が流入しており、それが国際的、地域的、国家的な制度やシステムにも影響を与え、現実に我々の生を決定するようになっているという視点から、それらの“学問の中の宗教性”を現代における宗教の一つのあり方として捉え、実際に学問の中に宗教的な考えがどのように存在しているかを俯瞰的に明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は学術という世俗空間において宗教的な感覚や論理がどのように表明されているかを、主に日本を含む東アジアを題材として明らかにすることを目的として始まった。そのため、研究は東アジアにおいて該当するような研究書を搜集し、それを分析することを主要な内容とすることになった。また、研究の途上において、死生学や応用倫理学のような新しい学問分野において宗教的感覚が濃厚に表明されていることが明らかになり、東アジアにおける死生学・応用倫理が主要な対象になっていった。 上述のように、本研究の主要な対象は中国大陸における医療倫理学と、台湾の生死学(生死学)に大きく別れる。前者については、欧米の生命倫理学と比較して中国の医療倫理学の言説がどのような性格を持つかを分析し、人間を生まれながらにして権利を有する個人と捉えるのではなく、全体(社会)に対し何らかの義務を果たすことにより権利を付与されると捉える、基本的な人間観の点で大きく異なっていることを明らかにすることができた。 台湾の生死学については、台湾にアメリカの死生学(サナトロジー)を導入したのが、アメリカの大学で死の準備教育を担当した宗教学者であり、現代宗教について、現実に役に立つ宗教を志向するという独特な見方をしており、それが特定の宗教信仰を選択することで自らの生の意義を定めるという台湾生死学の特徴に影響を与えていることを明らかにすることができた。 宗教が大きな影響を与えている東アジアの学問領域には、他にも環境倫理などの事例を見ることができるが、医療倫理学と死生学の事例は現代における宗教の新しい様相を示すものとして、注目に値する価値を有すると見ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は2020年度から2022年度まで順調に展開し、中国大陸における医療倫理学・生命倫理学や、台湾の生死学(生死学)には濃厚な宗教的方向性を見いだしえることが指摘できるようになった。問題が生じたのは2023年度(予定されていた研究期間の最終年度)であり、研究の全てを統括していた研究代表者が病気に罹患していることが判明し、研究の発展が大幅に阻害されることになった。このため、研究期間の延長を申請し、2024年度に研究の完成を期することになった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長を行ったが、研究代表者の病気という事実は変更できないので、研究進展のペースを急に恢復できるわけではない。しかし、既に相当の研究の蓄積があり、その発表には大きな問題はない。現在、研究の内容は二部に分けて(中国大陸における医療倫理学と、台湾の生死学)整理を進展させており、2024年6月に『東アジアの死生学・応用倫理へ』と題して刊行することを計画中である。同書の発行を以て研究の完了とする予定である。
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