研究課題/領域番号 |
20K00079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小島 宏 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90344241)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 西欧 / ムスリム / 若年者 / 宗教実践 / 宗教人口学 / 結婚・家族 / 健康 / コロナ禍 / 結婚 / ベルギー / ムスリム男性 / 移民2世 / 学歴 / コーラン教室通学 / 学校の出自別構成 / 関連要因 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで西欧諸国のムスリム・マイノリティの宗教的飲食制限の関連要因の分析を行ってきたが、フランスの1992年・2008年全国調査のミクロ(個票)データを用いてムスリム移民1世・2世の宗教的飲食制限の関連要因の分析を行った際に、ムスリム人口の民族別人口構成・地域分布の変動の影響が窺われた。また、その関連要因が宗教的シンボル着用についてのものとは一致せず、飲食制限のシンボル着用に対する影響の男女間の差異も明らかになったので、個別の宗教実践ごとに関連要因を分析するとともに、宗教実践間の関係を宗教人口学の観点から明らかにする。その際、民族間、移民世代間、男女間、宗教実践間の関連要因の相違に着目する。
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研究実績の概要 |
2022年度は主として2021年11月に18-39歳のムスリム男女を対象として英国で実施したウェッブ調査「コロナ禍における英国ムスリムの宗教実践」のミクロデータを用いた実証分析を行った。まず、ロジット分析により、宗教関連要因の健康に対する影響を明らかにすることを試みたところ、予備的分析の結果を修正することになった。肉体的健康が悪いのはマドラッサに通わなかった者、友人の約半数がムスリムの者、ムスリム友人の少数がインターネット経由の者で、良いのは宗教的・民籍的結婚手続きをした有配偶者、モスクで頻繁な礼拝をした者であった。また、調査時の精神的健康が悪いのは白人ムスリム、アジア系ムスリム、マドラッサ(補習クラス)に通わなかった者、友人の約半数がムスリムの者、ムスリム友人の少数がインターネット経由の者で、良いのは宗教・民籍的手続きをした有配偶者、モスクで頻繁な礼拝をした者であった。宗教性がやや高い場合に健康状態が良いという結果であった。 また、家族関連要因の健康に対する影響の分析も試みたが、肉体的健康が良いのは男女総数では「宗教・民籍結婚」「兄弟姉妹なし」の者、男性では「弟あり」「兄弟姉妹なし」「16歳未満子あり」の者、女性では肉体的健康が悪いのは「宗教・民籍結婚」「16~24歳親族あり」の者であった。精神的健康が良いのは総数では「宗教・民籍結婚」「世帯人員4人」「兄弟姉妹なし」「25~64歳親族あり」の者、男性では「世帯人員4人」「弟あり」「兄弟姉妹なし」「16歳未満子あり」「25~64歳親族あり」の者、女性では「宗教・民籍結婚」「世帯人員4人」の者であった。このほか生活満足度、ワクチン接種の有無、COVID-19検査受診の有無、世帯内感染者の有無についても同じモデルで分析を行ったし、インターネット関連要因の影響についても予備的な分析を行って次年度の学会報告等に備えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は全面的に対面授業に移行したこともあるため、内容を更新しながらオンライン授業用の教材を対面用に変更するのに時間がかかり、研究に割ける時間が制約された。また、コロナ禍により、秋まで大学により海外出張が禁止され、その後も制限されていたため、イギリス等での現地調査ができなかった。そこで、2021年11月に日本の調査会社を通じてイギリスで実施した小規模なウェッブ調査のミクロ(個票)データの予備的分析を主として行った。コロナ禍との関連でムスリムの宗教実践を分析したり、健康関連行動を分析したりした。また、引き続き、西欧諸国ムスリムのコロナ禍の宗教実践と健康関連行動に関する文献(書籍、インターネット上のもの)の収集・整理と、西欧諸国のムスリム関連調査のミクロデータ(インターネットで利用可能なもの)の収集・整理を行った。各種の予備的実証分析により興味深い結果も得られて多少は遅れを取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は予算があまり残っていないため、イギリス等での現地調査ができないが、国際学会でのオンラインでの学会報告等を行う予定である。そのため、引き続き、収集した文献等を用いながら、イギリスで実施したウェッブ調査のミクロデータを用いて宗教実践と健康やコロナ禍対処行動に関する実証分析を続け、国内学会での報告や論文作成を行う予定である。それと併行してウェッブ調査の報告書を執筆し、何らかの形で刊行する予定である。 さらに時間的余裕があれば、新規に利用可能になりつつあるコロナ禍における移民等の行動に関するミクロデータの比較分析に着手する予定である。
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