研究課題/領域番号 |
20K00082
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01030:宗教学関連
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
狭間 芳樹 大谷大学, 真宗総合研究所, 特別研究員 (80588046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 樋口龍温 / 護法場 / 安藤劉太郎 / 関信三 / キリスト教諜者 / 東本願寺 / 排耶論 / 耶蘇 / 松本白華 / キリシタン / 破邪 / 漢文聖書 / 浦上キリシタン / 説諭 / 浄土真宗 / 宗教学 / キリシタン史 / 日本思想史 / 殉教 |
研究開始時の研究の概要 |
長く禁制下にあったキリスト教が幕末にふたたび到来すると、仏教界は邪教たるキリスト教の流入を防ぐことこそが護国を担う宗門の使命だと考え、積極的な破邪活動を展開した。そうしたなか東本願寺の樋口龍温は、仏教の敵がキリスト教だけではないと説くとともに、むしろキリスト教からも学ぶことで宗門の活性化、すなわち仏教の再興を企図するに至った。本研究では、独自に聖書などを収集し、研究を行った樋口のキリスト教観について分析するとともに、樋口のもとで研鑽をつんだ僧侶たちが幕末の長崎で摘発されたキリシタンの改宗に従事した際の覚書といった史料を手がかりとして、棄教を拒み殉教へと至った者の信仰理解の内実をも解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の主要課題である樋口龍温(=香山院龍温)の未公開史料として、これまでの研究期間中に進めてきた書簡群の翻刻を当該年度に完了した。また、樋口がかつて住職を務めた真宗大谷派の圓光寺(京都市左京区)において、幕末の江戸で樋口が収集した代表訳本(漢文の旧約・新約聖書)と同時に発見された史料の追加調査もおこなった。 破邪防御掛として樋口が講師を務めた護法場でキリスト教を学び、実際にキリシタンと対峙した破邪僧に関する研究としては、その後、還俗し東本願寺から離れ、幼稚園教育に専心するなかでキリスト教と関わった安休寺猶龍(=安藤劉太郎/関信三)の思想的変遷を分析し、その成果の一端を口頭発表としてキリスト教史学会・第74回大会(2023年9月)において公表した。 そして樋口がその生涯で収集した膨大な資料のうち、大谷大学図書館に所蔵されているもののなかから、護法場に関する『護法場随筆反古類集冊』といった自筆本をはじめ、「貫練随筆」や「講師香山院演説」などの調査をおこなうとともに、樋口のキリスト教観を解明するにあたって、すでに公刊されている『闢邪護法策』『急策文』といった著作の手稿を確認することにより、樋口の破邪論に見られる当時の西洋哲学思想の影響を考察し、近代親鸞教学研究会の第14回研究発表会(2024年3月)で発表した。 そのほか、海外の研究者との共同研究として、「アジア・キリスト教・多元性」研究会のメンバーでもある韓国の朴銀瑛氏(成均館大学)と学術論文(韓国語)を執筆し、本研究で明らかになった成果を韓国日本思想史学会の機関誌『日本思想』(第45号)で公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度に引きつづき、樋口龍温に関する未公開史料のうち書簡類については、研究協力者の東舘紹見氏(大谷大学)、松金直美氏(真宗大谷派教学研究所)、そして下村優佳氏(大谷大学大学院)、メナチェ・アンドレス氏(京都大学大学院)といったメンバーで毎月の研究会を大谷大学真宗総合研究所で実施し、翻刻については完了させた。 調査としては圓光寺での追加調査のほかに、横浜開港記念館(神奈川県)に所蔵されている明治期に刊行された日本語訳聖書をはじめ、樋口のもとで学んだ破邪僧らにも影響を与えたと考えられうる耶蘇(キリスト)教に関する文献の調査などもおこなった。 また本研究を推進するにあたり必要となる分析のための研究会や意見交換会を、定期的にオンライン形式で実施したものの、完了に向けて2023年度中に開催する予定であったワークショップや公開シンポジウムなどについては、初年度以来の新型コロナウィルス感染症による影響により、その計画に遅延が生じたことから到達目標に至らず開催がかなわなかった。したがって全体の進捗状況としては、やや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の分析を目的とした研究会を、引きつづき定期的に開催することにより、そこで明らかになった成果を、日本思想史学会やキリスト教史学会などの学術大会、そして「アジア・キリスト教・多元性」研究会や近代親鸞思想研究会をはじめとした研究会で報告するとともに、学術論文として公表する。 また、新型コロナウィルス感染症の影響により滞ってきた追加調査などを適宜実施し、最終年度の研究を推進する。具体的には、研究成果全体の報告を趣旨とする公開シンポジウムを開催するとともに、本研究の主課題である樋口龍温にまつわる未公開史料の公開(書籍としての出版)をおこなうことを予定している。
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