研究課題/領域番号 |
20K00102
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
西山 雄二 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (30466817)
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研究分担者 |
亀井 大輔 立命館大学, 文学部, 教授 (80469098)
宮崎 裕助 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40509444)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ジャック・デリダ / 脱構築 / 責任 / 現代思想 / 現代哲学 |
研究開始時の研究の概要 |
ジャック・デリダは西洋の形而上学的価値観を根底的に読みかえる「脱構築」を提唱し、その思想的影響は様々な分野に広まった。彼が2004年に死去した後も講義録などの出版物が相次いでおり、世界各地で国際会議が開かれている。本研究の目的は、【1】晩年の講義録「責任の問い」を通じてデリダの脱構築思想を総合的に解明すること、【2】責任の問いを主に現象的思想における哲学・倫理的な文脈、政治・社会的な文脈で解明すること、【3】海外の研究者と共同して国際的な研究拠点を形成することである。
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研究実績の概要 |
2022年度はオンライン配信ないし対面の形式で主催・後援のセミナーを計11回開催し、動画記録を編集してネット上で公開した。サイトでの動画アーカイブはさらに充実しており、視聴者は研究者のみならず、学生や一般まで多岐にわたる。セミナーの内容は、「ジャック・デリダによる中国語」「カトリーヌ・マラブー『泥棒! アナーキズムと哲学』を読む」「ロドルフ・ガシェ『読むことのワイルド・カード』を読む──ポール・ド・マンと/のテクストについて」「ジャック・デリダ「差延」を読む」「ジャン=リュック・ナンシーの哲学──共同性、意味、世界」「エマヌエーレ・コッチャとの対話」「ジャコブ・ロゴザンスキー連続セミナー」などである。 研究成果の公刊は好調で、亀井は『視覚と間文化性』『ミシェル・アンリ読本』に、宮﨑は『『啓蒙の弁証法』を読む』『精神分析のゆくえ』に寄稿するなど、多数の論考を発表した。本研究メンバーが世話人を務める「脱構築研究会」では、オンライン・ジャーナル「Supplements」の第二号が2023年3月に公刊された。デリダの一次文献の日本語翻訳として、『生死』『メモワール──ポール・ド・マンのために』は重要な成果であった。 国際的活動も活発に展開することができた。西山は、国際シンポジウム「ジャン=リュック・ナンシーの哲学──共同性、意味、世界」を企画・運営・発表し、その記録集の出版準備をおこなった。フランス大使館とともにエマヌエーレ・コッチャの招聘に尽力し、東京と京都で講演を準備・運営した。国際会議での発表として、亀井がGIP Lectures 2023: Phanomenologyに、宮﨑が7th Derrida Todayにオンラインで発表した。 以上、2022年度も多彩な活動を展開し、論考・翻訳・発表のすべての面で、デリダ、ナンシー、コッチャの研究に関して多大な成果を上げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も新型コロナウイルス感染症状況が続いており、海外渡航が不可能であったため、フランスのデリダ資料庫における遺稿・草稿の調査・分析が実現できなかった。海外・国内への旅費が使えなかった分、図書・資料、オンラインセミナー用の機材に予算は充てられ、有効に活用された。 オンライン配信のセミナーは好評で、各回30-100名ほどの参加者がいた。また、動画記録は適宜編集してネット上で公開され、脱構築研究のプラットフォームとして定着している。 翻訳に関しては、単行書として、『生死』『メモワール』を刊行することができた。いずれも、デリダ研究に欠かせない重要著作である。また、デリダ『死刑II』の翻訳作業が進められた。 2021年に逝去したジャン=リュック・ナンシーを追悼し、その思索を継承する研究活動は継続されている。2022年9月、国際的な学術シンポジウムが開催され、若手研究者らとの共同も展開された。シンポジウムの成果は読書人新書として公刊準備が進んでいる。 2021年から準備を始めた『デリダ読本』(法政大学出版局)については、執筆準備が進められ、原稿が届きつつある。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症とウクライナでの戦禍の影響で、渡航費のコストが高騰しているため、現在の予算内では海外渡航や海外研究者の招聘は困難であることが予想される。本研究の目的のひとつは、海外のデリダ研究者と連携して、脱構築研究の双方向的なネットワークを整えることである。引き続き、オンラインなどで工夫をして、国際セミナーを実施する。 2023年9月に、東浩紀の『存在論的、郵便的―ジャック・デリダについて』と東氏の思想をめぐる催事を東京にて開催予定である。同書は日本のデリダ研究に大きなインパクトを与えた書であり、25周年の節目に東氏を交えて討論する機会を設ける。デリダの講義録の編纂者Nicholas Cottonが博士論文をもとにPenser la "pervertibilite". Avec Jacques Derridaを公刊した。デリダの脱構築思想における倒錯の倫理を考察した同書をめぐって、国際セミナーを開催すべく検討中である。 若手研究者を中心にジャン=リュック・ナンシー研究会が組織され、第二回として『無為の共同体』をめぐるワークショップを2023年8月に開催予定である。 デリダ没後20周年の2024年に向けて、『デリダ読本』(法政大学出版局)の準備を継続させる。大御所から若手まで日本のデリダ研究の総力を結集し、新たにデリダ思想を蘇らせる土台を築き上げるこの論集は本研究の最終的な成果の一つとなる。
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