研究課題/領域番号 |
20K00104
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
松本 郁代 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 教授 (60449535)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 蒙古襲来 / 応永の外寇 / 伊勢神宮 / 風宮 / 満済 / 通海 / 『太神宮参詣記』 / 異国調伏 / 清瀧権現 / 五社講式 / 異国観 / 国土観 / 盤古 / 華夷秩序 / 天皇 / 神話 |
研究開始時の研究の概要 |
前近代における東アジア地域は、中国を中心とする華夷秩序によって文化圏を共有した。その一方で、天地開闢神話はそれぞれの地域ごとに伝承された。いわば、「華夷」の文化圏と国土の地理認識には理念的コンフリクトがあった。本研究では、「国土」の原初を語り、他地域に対する自国認識を表した中世日本の「国土観」成立を、東アジアにおける華夷秩序の視点から捉え返す。特に、中世で議論された中国神話に登場する「盤古」解釈の分析を通じて、中世の神仏体系と中世神話による「国土観」が、中国神話と華夷秩序を相対化した点を明らかにし、東アジア文化圏と皇帝を意識した理念的統率者としての「天皇」像を成立させた思想的位相を考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は、中世日本の自国認識としての国土観とそこに表れる大陸(異国)観を比較し、理念的統率者としての天皇の思想的位相を追究するものである。当該年度は、中世の対外戦争である「蒙古襲来」「応永の外寇」の際に登場した異国御祈の対象となった神仏と、これらの神仏が守備する国土観をつうじて形成された、大陸観への連続性を分析した。本朝としての日本が大陸との連続性を受容する政治的・文化的契機として、2つの対外戦争が挙げられる。 具体的には、醍醐寺僧侶の通海が撰述した『太神宮参詣記』(『参詣記』)『清瀧権現講式』『五社講式』『十帖鈔』等にみられる「蒙古襲来」関係の記述を分析し、通海の死後、通海が作り出した神明と仏法に関する対外的な言説が再生産され、政治的に享受されることにより、伊勢ー天照大神を登場させた異国観が国内に醸成されていく過程を考察した。 具体的には、将軍足利義持の時代に通海『参詣記』のうち神宮法楽に備える記述が満済によって書写されたと推測される史料「伊勢大神宮事」(『醍醐寺文書』所収)を分析した結果、応永の外寇に際し蒙古襲来時の言説が再生産され、天照大神をはじめとする神仏観や異国御祈が継承されている点を導いた。また、義持期は伊勢における神宮法楽の再整備が政治的に行われる一方で、京中に怨霊や疫病と対峙する「伊勢の神」が風聞される。対外的な脅威と政情不安は、怪異や異国といった目に見えない観念的な世界が語られることによって、伊勢-天照大神の神格にゆらぎがみられるようになる。 上述した史料の分析をつうじて、対外戦争を契機に「異賊」に対峙する伊勢ー天照大神が登場する過程のなかに、天照大神を含む神仏の所在が神話的国土観から対外的国家観へと接続され、さらにそこから言説の享受主体が分岐していく社会的変容を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に必要な史料が未翻刻のものが多いため調査に時間がかかっているほか、海外の国土観に関する文献調査が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き通海撰述の史料を翻刻しながら、調査分析を行っていく予定である。通海撰述の記述にはいくつか中国神話に関するものも散見する。通海撰述の史料のなかには、中国由来の三才思想や西王母や穆王の神話などが登場しており、通海が対大陸の思想としてこれらをどう解釈し、どのような意図による国土観や大陸観を構想したのか、中国神話の日本的解釈として、引き続き調査分析を行っていく。 また、通海撰述の『五社講式』を翻刻および分析することにより、通海が五社に対する(天照大神・八幡大菩薩・春日四所霊廟・天満大自在天神・清瀧権現)講式をつうじて創出された神仏構想について、通海がとらえていた神話的国土観や対外的国家観と、併せて大陸を含む地理的観念における天皇の位置づけについて考察を進めていく予定。
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