研究課題
基盤研究(C)
「ポスト・ジャポニスム」というタームは、20世紀前半期の日本の美術あるいは美意識の海外への伝播を扱うために使われている。ここ数年の間、実証的研究が積み重ねられているものの全体像を浮かび上がらせているとは言い難く、今後さらなる調査を深める必要がある。本研究では、このポスト・ジャポニスム期における、ベトナム・フランス・日本の三国間の日本美術と藝術の交渉──フランスによる日本藝術の拡散、ベトナムによる受容や領有、 日本による反応と接収──を明らかにすることを目的とする。
1.研究発表の進捗と報告 2022年度は、国際シンポをあわせて4本の講演・発表を行った。そのうち、11月にベトナムで開催された仏・越・日国際文化教育会議(@フエ師範大学)では、基調講演を担当することができた。フランス語で行った発表は、反響を呼び、新たな交流を生み出すきっかけとなった。また、夏に赴いたフランス海外文書館(エクス=マヴァン=プロヴァンス)、フランス国立図書館で新たな資料を入手することができ、テクスト読解を進めている。2.書籍の執筆分担 2冊の書籍の分担者となり、当科研テーマの成果発表の場となった。一冊は『近代中国美術の辺界 : 越境する作品、交錯する藝術家』(勉誠出版)に「ベトナム絵画の父と兄―画家ナム・ソンの美術論」を執筆した。もう一冊は『現代ベトナムを知るための63章【第3版】』の美術の章を担当した。3.海外の出版社との接触 フランスの出版社、メゾンヌーヴ社より、当研究成果である(『ベトナム近代美術史:フランス支配下の半世紀』(原書房))をフランス語で出版する機会のオファーを受けた。現在、少しづつ翻訳中であり、2023年度は時間を確保して翻訳を進めたい。4.海外の研究機関との協力 フランスのアジア研究機関IrASIA(@マルセイユ)所長との交流があり、共同研究などの企画を行った。12月にフエ師範大学で行われた国際シンポジウムはそのひとつである。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍によって、予定していた資料調査・現地調査は遅れている。しかし、これまでの研究成果をまとめて発表する機会に多く恵まれた。また、フランス語による出版の企画のオファーもあり、国外にも成果を発信する道が開けた。
2022年度は、数度にわたる講演会などを通じ、主に国内における研究成果の社会還元ができた。2023年度は、国外にも研究成果を発表していきたい。2022年の9月に、東洋学を専門とするフランスの老舗出版社、Maisonneuveから、出版のオファーを受け、現在、書籍『フランス近代美術史:フランス支配下の半世紀』(原書房、2021年)をフランス語に訳している。2023年度までに仏語訳原稿を入稿する予定である。
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ユリイカ
巻: 53(5) ページ: 280-287
白百合女子大学研究紀要
巻: 57 ページ: 89-116
40022816935