研究課題/領域番号 |
20K00144
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 中京大学 (2021-2023) 神戸市外国語大学 (2020) |
研究代表者 |
平野 恵美子 中京大学, 教養教育研究院, 特定任用教授 (30648655)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ロシア・バレエ / 帝室劇場 / バレエ・リュス / ディアギレフ / マリウス・プティパ / アンナ・パヴロワ / ミハイル・フォーキン / アルセニー・コレシチェンコ / リュシアン・プティパ / グランド・オペラ / バレエ / アルテュール・サン=レオン / アレクサンドル・シリャーエフ / 魔法の鏡 / プティパ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではロシア・バレエの越境的な展開に焦点を当て、①そのグローバルな発展の道筋と日本を含む他の文化との相互影響関係を探る。そのために、②これまでの研究を有機的に結びつけることで新たな研究成果の地平を拓くことを目指す。と同時に、③日本で行われる研究を海外でも積極的に紹介する。また、④バレエの政治的な側面にも焦点をあて、人文系研究の一つである舞踊学の存在意義を問いたい。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績として、まず、共著査読付論文『上演演目データの整理・分類における諸課題:20世紀のオペラ公演を例に』がデジタルアーカイブ学会誌に掲載された。ここでは、20世紀ヨーロッパ歌劇場における上演傾向研究の一環として、多言語に渡るフィールドワークと文献による興行情報の調査結果をデータ化・蓄積するにあたっての諸問題を提示した。具体的には、ポスターや年鑑からデータを抽出・統合する際、資料の選択、視覚的側面の配慮、項目や備考欄情報の取捨選択、上演言語の特定、作品の改変による紐付けが困難な場合などがある。とりわけ、各資料の掲載項目自体が、地域や時代固有の価値観を色濃く反映していることから、それらの価値観の保持は統一的なフォーム作成の意図と相反することがある。様々な資料の比較から得られたこれらの知見を共有することは、データベース作成への新たな視座を提供するものである。 また、ロシア国立バフルーシン演劇中央博物館で開催された国際学会『劇作家オストロフスキー生誕200年記念シンポジウム』にオンラインで参加し、「A.コレシチェンコ音楽、マリウス・プティパのバレエ《魔法の鏡》の失敗を取り巻く状況」という研究報告をロシア語で行った。ウクライナ侵攻の影響でロシアとの交流に翳りが差し、ロシア芸術文化に対する忌避も見られるが、この状況が永遠に続くわけでも、また過去の芸術作品そのものの価値が無くなるわけでもない。将来のために関係や繋がりを絶やさないようにすることは重要だと思われる。 そして舞踊研究の世界的権威である英国ヴィクトリア・アルバート博物館のダンス・キュレーター、ジェーン・プリチャード氏を招聘し、『世紀転換期のダンスとファッション』と称する講演会を名古屋・東京・京都でハイブリッド開催し、大変貴重な知見を国内外で共有すると共に、日本からのグローバルな発信力を強化することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロシアへの渡航は不可能ではないが様々な理由で困難な今日、上述のロシア国立バフルーシン演劇中央博物館で開催された国際学会に、オンラインとはいえ参加したのは、今後に向けて関係を維持し続けることが出来たという点で非常に意義深い。また、日本からの発信により、本研究の課題の一つである「日本で行われるロシア・バレエ研究を海外で積極的に紹介する」ことに本年度も貢献できたと考える。 ジェーン・プリチャード氏は中京大学・早稲田大学・京都芸術大学でそれぞれ「20世紀初期のダンスの変遷」「3人のバレリーナたち」「バレエ・リュスとファッション」という三つの異なる公開講演会を行った。これは舞踊学とファッション研究など他の研究分野をも結びつけ、異なるフィールドの研究者との新たな関係も築くことが出来た。対面・オンラインとも、国内外から多くの参加があった。このように国内外に向けたハイブリッド・レクチャーを開催したことで、「ロシア・バレエの越境的展開に関する研究と国際的ネットワークの構築」という目標の達成に向けて大いに前進している。 一方、ロシアへの渡航の難易度の高さにより、現地アーカイヴでの調査研究は滞っている部分がある。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も引き続き、国内外のバレエ研究者を招き、講演会やシンポジウムを開催する。対面とオンラインのハイブリッドで行なうことにより、今まで同様、海外からの参加も積極的に呼びかけたい。これまでの実績により、本課題の研究代表者とこれが主催する講演会は、海外の研究者にも広く認知されることとなり、既に権威として認められている研究者だけではなく、若手の優秀な研究者からも報告を行いたいというメッセージを複数受け取っている。当初はシンポジウム形式を予定していたが、渡航に伴う様々な困難(航空券価格の高騰、飛行ルートのやむを得ない変更によるフライトの長時間化、権威的研究者の高齢化等)以上に、1回の講演会における議論が毎回非常に活発で長時間に渡るため、講演会をシリーズ化して、回数を多く行うことが大変有効ではないかと考えている。またこれまでの講演会の内容を報告集としてまとめ、英語・日本語のバイリンガルで出版し、研究成果を広くアカデミアや一般社会に還元したい。日本語で書かれたバレエの研究関連書籍は日本以外で読まれることは稀なため、海外で出版することで、日本からの国際的なバレエ研究の発信力を高めたい。 今後も欧米中心のバレエ研究界に日本の研究者の存在もアピールしていく。上述のように本課題の研究代表者は海外でも認められ、複数の国際学会から参加を呼び掛けられている。積極的に参加して報告することで、旧知の研究者たちと対面で意見・情報の交換を行う。ウクライナ侵攻の影響は芸術や文化にまで及び、未だ「ロシアもの」の公演を忌避する傾向がある一方で、2024年2月、駐露日本大使は、日ロの文化・人的交流事業を今年から再開すると発表した。戦後の将来につなぐため、ロシア・バレエに関する研究は継続しなければならない
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