研究課題/領域番号 |
20K00148
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 庸子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (00273201)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | モダニズム / 芸術人形劇 / モダンダンス / エドワード・ゴードン・クレイグ / リヒャルト・テシュナー / ゾフィー・トイバー=アルプ / 仮面 / 身体 / 人形劇 / ドイツ語圏 / 芸術 / モノ / 舞踊 / テシュナー / ドイツ / ウィーン / ドイツ文学 / 物質性 |
研究開始時の研究の概要 |
ドイツ語圏モダニズムの文学、演劇、舞踊、映画、造形芸術などの各領域では、人形表象が広く認められる。しかし同時期に成立した多彩な新しい芸術人形劇が、モダニズムの枠組みにおいて研究されることは稀であった。容易に触知し操作できる媒体である人形を用いた劇が復興した背景には、社会における身体像の揺らぎや、「人間」と「モノ」の関係の変容があったと考えられる。本研究は、このような全く新しい視点から、ドイツ語圏の芸術人形劇をめぐる言説や舞台実践が、モダニズムのなかでどのような意義を持ち、また当時の身体観の変化や「人間」と「モノ」をめぐる関係の変容どのような関連を持っていたのかを明らかにしようとする試みである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ドイツ語圏モダニズムの芸術人形劇をめぐる言説や舞台実践が、ドイツ語圏モダニズムの中でどのような意義を持ち、また当時の身体観の変化や「人間」とと「モノ」をめぐる関係の変容とどのような関連を持っていたのかを明らかにすることである。 2022年度は、2021年度のシンポジウムの発表内容を基に、論文「ドイツ語圏の芸術人形劇における異文化受容―クレイグ、トイバー=アルプ、テシュナー」を執筆し、学会誌への掲載が決定している。本論文では、芸術人形劇の成立に、身体像の変化や、人間とモノとの関係の変化が反映されていること、異文化の仮面や人形というモノとの出会いが大きな役割を果たしていること、身体イメージのみならず、人形の材料や操作法においても大きな影響を受けていることを明らかにした。また本年度は、昨年度に引き続き、科研研究グループ「歴史的アヴァンギャルドの作品と芸術実践におけるジェンダーをめぐる言説と表象の研究」および愛知県芸術劇場と共同で「ダンス・スコーレ特別講座シンポジウム ダンスと人形」を企画・主催し、有名なアニメーション作家ロッテ・ライニガーを例に、モダニズムにおけるモダンダンス、芸術人形劇、アニメーションの密接な関連について発表も行った。本シンポジウムは、大学内外から約120名の参加者を得、一般の方の参加も多く、研究成果を広く社会に還元することができたと考えている。また本年度は、これまでのコロナ禍で断念していた国内および海外で調査を行うことができた。特に、ウィーンの演劇博物館およびミュンヘンの市立博物館においては、本科研・研究課題に関する貴重な資料を多数蒐集することができた。また、シンポジウム『20世紀初期の音楽と舞踊におけるジャポニスム・オリエンタリスム-女性の表象と身体―』に招待され、モダニズムにおいて人形と非常に関連の深い仮面について発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、予定していた通り、これまでの研究成果を元に、論文を執筆し、学会誌への掲載が決定している。また、シンポジウムも予定通り開催し、多数の参加者を得たほか、このシンポジウムをきっかけに学会発表に招待されるなど、大きな反響があった。コロナ禍で断念していた海外調査については、貴重な資料を多数入手することができたが、その分析はこれからである。そのため、1年間の延長を申請し認められた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、引き続きドイツ語圏の芸術人形劇に関する学会発表を行う。2023年3月のシンポジウム『ダンスと人形』の趣旨説明において、エドワード・ゴードン・クレイグの「超マリオネット」(いわゆる「超人形」)の構想について言及したところ、反響があり、学会での発表を依頼された。生身の俳優に代わる「人工の人物」を提示したクレイグの「超マリオネット」は、専ら演劇史において論じられてきているが、日本を含む世界のモダニズム人形劇においても、大きな意義を持つことを、新たに蒐集した資料を提示しつつ示したい。またクレイグは、演劇や人形劇、舞踊などの舞台芸術のみならず、映画や造形芸術の分野でも注目を集めていた。この点についても新たな資料を紹介しつつ論文を執筆する予定である。また、2022年度の海外調査において、演劇博物館や資料館で多数の資料を蒐集した。その内容は、芸術人形劇に関する書籍や論文、劇人形や人形劇公演の写真、公演パンフレットのコピー、人形劇家によるデザイン画、人形劇家の手紙、人形劇講演に関する新聞記事などである。今年度はこれらの資料を分析し、論文の執筆を進める。
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