研究課題/領域番号 |
20K00158
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 武蔵野音楽大学 |
研究代表者 |
隈 晴代 (宮崎晴代) 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (10622061)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ソルミゼーション / ウト、レ、ミ、ファ、ソ、ラ / トリ、プロ、デ、ノス、テ、アド / ソルミゼーション・シラブル / 修道院 / 歌唱法 / イントナツィオ定型 / ノエアネ / ノエアギス / アウレリアヌス・レオメンシス / レギノ・デ・プリュム / スコリカ・エンキリアディス / ムジカ・エンキリアディス / フクバルド / グイド・ダレッツォ / 11世紀 / 13世紀 / 西洋中世音楽 / 音名 / 音楽教育 |
研究開始時の研究の概要 |
11世紀の音楽理論家グイド・ダレッツォに由来する「ウト(ド)・レ・ミ」という音の名前(ソルミゼーション・シラブル)の伝承過程で、イタリアを中心に「トリ・プロ・デ・ノス・テ・アド」というシラブルも使用され、その使用期間は500年以上にも及んでいた。 本研究はこのシラブルに着目し、それが①どのような文脈で使われたのか、②「ウト(ド)・レ・ミ」というシラブルと、いかに使い分けられていたのか(修道院会派や理論体系の違いなど)、③500年の間にその使われ方がどのような変化したのか(音組織や演奏習慣など)について調査し、ソルミゼーション・シラブルの伝承形態を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、研究上で生じた新たな課題の解決に大きく時間を取られた。 本研究の主たる目的は、従来のソルミゼーション・シラブルである「ドレミ……」という唱法以外に「トリ、プロ、デ、ノス、テ、アド」というシラブルがあり、そのシラブルの用法やソルミゼーションの歴史上の位置づけを明確にすることである。研究対象のソルミゼーション・シラブルの元となった歌詞は、既存の聖歌を使用したのではなく、ソルミゼーション・シラブルのために創作された歌詞だと言われている。そういった前提のもとに 「トリ、プロ……」というシラブルを使用した理由を調査していくと、ギリシャ語による旋法名に行きつく。その可能性はすでに指摘されているものの、明確な根拠が示されていないまま、その仮説だけが伝承されていることが明らかになった。そこで、8世紀ごろまでさかのぼり、旋法名の用法に絞って調査していった。その調査はまだ途中であるが、ギリシャ語による旋法名は、従来考えられているよりも、はるかに長期間使用されており、その名称はラテン語による助数詞ではなく、依然としてギリシャ語の助数詞を用いていること、またドリア、フリギアという名称よりも多いことも明らかになりつつある。今後はそのデータ収集を完成させることと、その解釈についての考察が、今年度の上半期の目標である。それによって、研究テーマのシラブルが用いられた意味が明らかになると予測される。 もう一つは、新たに入手した写本の画像データを解析すると、「トリ、プロ、デ、ノス、テ、アド」というシラブルには、新たに別の旋律がつけられていることが明らかになった。この旋律がどこに由来するものなのか、残念ながら現在まで未解決である。今年度は、その点の補強的な調査を行い、従来とは異なるソルミゼーション・シラブルの全容をまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究のテーマである「トリ、プロ、デ、ノス、テ、アド」のシラブルを記載している写本のうち、未入手だったもの4点を入手し、当該シラブルが置かれている箇所やその前後の文脈との関係を見ていったが、その中で当該シラブルの置かれている場所が、従来の理論書の一部『未知の聖歌に関する聖ミカエルへの書簡』以外の箇所に置かれている例があったこと、またそのシラブルが付されている旋律が、従来の旋律とは異なっていることが判明したが、その旋律の出所が残念ながら明らかにならず、現在も調査中である。 また、当該シラブルが用いられた理由は、「研究実績の概要」に記したように、データを示して論証していく必要があるが、ラテン語の助数詞も同時に用いられており、それらの用法のデータ収集にかなりの時間を取られ、残念ながら未完であるため、論文としてまとまった形での発表には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究課題の最終年度にあたるため、これまでに調査した全ての写本に関して、①調査対象である"tri pro de nos te ad"のシラブルが置かれている箇所、その前後の文脈とシラブルの役割、②①から導き出される当時のシラブル唱法の実践、③新しく浮上してきた修道会における実践との関係について、研究をまとめる予定である。具体的な発表場所として、『武蔵野音楽大学研究紀要』への論文投稿および日本音楽学会全国大会での口頭発表を予定している(『研究紀要』へはエントリー済み)。
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