研究課題/領域番号 |
20K00166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
足達 薫 東北大学, 文学研究科, 教授 (60312518)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | マニエリスム / エロティック文学 / パルミジャニーノ / イタリア美術 / 裸体表現 / 性的表現 / セクシュアリティ / ピエトロ・アレティーノ / フランチェスコ・ベルニフランチェスコ・ベルニ / アントニオ・ヴィニャーリ / ジュリオ・ロマーノ / ドメニコ・ベッカフーミ / イタリア文学 / 身体表現 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、マニエリスムにおける脱規範的な身体表現の形成および展開を、同時代のエロティック文学における身体観および表現と照合し、実証的に再構成するものである。 この目的を実現するため、各年度において、四つの注目すべき規範的事例(ジュリオ・ロマーノとライモンディとアレティーノ、パルミジャニーノとベルニ、ベッカフーミとヴィニャーリ、画家であり詩人でもあったブロンツィーノ)に焦点を当て、文学的テクストの読解と翻訳、美術作品の視覚的分析を進める。 以上の成果を総合し、テクストの翻訳および注釈をともなうテーマ的モノグラフを出版することを最終的目標とする。
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研究実績の概要 |
2022年度において、勤務先の業務過剰および美術史学会事務局長の重職を負担することとなったため、海外研究ができなかった。そのため、以下の2点に重点を絞って調査した。 第一に、パルミジャニーノによるエロティック描写、特に素描における例を以下の観点から分類し、その描写上の特性をデータベース的に網羅する作業を続けた。①性行為およびそれに関わる神話的主題(例 マルスとウェヌス) ②ファルス(男性器)を拡大したり、強調したりする素描(例 いわゆる「ガニュメデス)) ③性器を拡大したり、他の場面の中に挿入して強調する素描(例「サバトに向かう魔女」) 続いて、パルミジャニーノが描いた注文作品および公的作品におけるエロティックな描写および性的部位の強調を再検証した。その検証において、以下の重要な(しかし見過ごされがちな)先行研究を見いだした。James Grantham Turner, An Erocic "Annunciation" by Parmigianino or Bedoli, Source: Notes in the History of Art, Vol. 29, No. 2 (Winter 2010), pp. 21-26. この研究による指摘を検証することが新たな課題となった。 他方、同時代におけるエロティック文学の重要例でありかつアクセス困難な著作、ヴィニャーリ『カッツァリア』の貴重な校訂版を読解・注釈する作業を続けている。シエナの同時代政治および社会に関する風刺的な意図に焦点を合わせた先行研究もあるが、本研究ではむしろ性器や臀部を一種の擬人像として「取り出し」、多様な物語的文脈に挿入したり、あるいは部分同士で奇妙な対話や時には性行為を行わせる記述が注目される。これらの完全な解釈は、パルミジャニーノを含むマニエリスム世代の美術と明らかな類似性を見せている。、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度より学内業務が急増するとともに美術史学会事務局長の任務が課せられた。いずれも本研究当初の予定にはなかったものであり、本研究の遂行が大いに妨げられる結果となってしまった。加えて、コロナウィルスの余波によって当初予定していたい海外調査がいまだ行われていない。これはきわめて問題的な状況であるため、2023年度はパルミジャニーノと『カッツァリア』に的を絞り。それらの分析を継続してとにかく進めるこことした。
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今後の研究の推進方策 |
他方、イタリア美術研究者のグループによる著作の刊行を予定しており、その中に「パルミジャニーノにおけるエロスとユーモア」と題する本研究の途上報告を行う予定としている。この論文では、おおよそ。以下の論点が述べられる予定である。 近年、パルミジャニーノ(1503-1540)による男女双方の描写におけるエロティシズムとユーモアが問題視されている。女性の場合は乳房および乳首、男性の場合は男性器および臀部が、世俗的ないし古代神話的テーマにおいてばかりでなく、宗教的主題の祭壇画でさえ異様に強調される。それらの作例では、女性描写の場合はエロス、男性描写の場合はユーモアが濃厚に漂っている。この描写に関して、これまでの解釈を踏まえながら、次のような源泉を提案する。(1)15世紀末から16世紀初期にかけての古代美術からの影響および聖俗主題の融合現象。(2)旧約聖書「雅歌」の影響と需要。(3)ペトラルカ主義文学における身体定型からの影響。(4)性的部位を“主人公”とするエロティック対話、ヴィニャーリ『カッツァリア』(1536年頃)との顕著な類似性。以上の観点を検討しながら、マニエリスムにおける「時代の身体」(バクサンドールの「時代の目」に基づいてターナーが提起した概念)を明らかにしていく。
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