研究課題/領域番号 |
20K00168
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芳賀 京子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80421840)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 彫刻 / ヘレニズム / ローマ / 彫刻流派 / ギリシア / 再加工 / エフェソス / 地方流派 / 地域流派 |
研究開始時の研究の概要 |
古代ギリシア彫刻は、大理石彫刻が始まった前6世紀には地域流派によって明らかな差異があったが、クラシックからヘレニズム時代には次第に均一化していく。しかし前2世紀から後1世紀にかけてローマが台頭してくるなかで、再び彫刻家の地域流派のあり方は大きく変化したように思われる。 この転換期に、ギリシア世界各地の彫刻工房がどのように再編成され、どのような特色を帯びていったのか。帝国全体を俯瞰した時に、各地方の彫刻工房はどのような役割を果たしたのか。ギリシア、アフリカ、小アジア、イベリア半島における彫刻工房や彫刻制作活動を追い、それぞれが「帝国の美術」の形成にどのように貢献したのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
ヘレニズム後期からローマ帝政初期という政治的・社会的転換期における古代彫刻の地域流派について、2023年度はギリシアの遺跡や博物館での作品調査を行った。現代のギリシアでは前146年のコリントス陥落以降は「ローマ時代」とされることが多く、ローマ時代のギリシア彫刻が熱心に研究されるようになったのはここ数十年のことにすぎない。そのため博物館のカタログの記述は極めて不十分で、現地での調査が不可欠であった。 コリントス遺跡は前44年にカエサルによって再建された植民市であるため、帝政初期の彫刻作品が一定数、まとまって残されている。オリュンピアには帝政期にも皇帝を顕彰する肖像群やモニュメントがいくつも建てられた。エレウシスの密儀には、皇帝を含めローマ人も帰依した者が多く、奉納品が多数認められる。マラトン博物館には、マルクス・アウレリウス帝の家庭教師としても知られるヘロデス・アッティクス別荘等の出土品が納められている。これらの作品を精査することで、先行研究で同時期にアテネ派彫刻工房によって制作されたとされている作品群のなかにも彫刻技法に差異があること、後世の修復と思われる部分がそこここに認められることを確認した。アテネ国立考古学博物館やアクロポリス博物館でも、これまで指摘されていない古代における修復跡を見つけることができた。また2009年に開館したパトラス考古学博物館では、未出版の作例を見ることができた。 調査によって、同一地域のほぼ同じ時期の出土彫刻にも様式に差異に認められることが明らかになったため、帰国後は調査記録を整理するとともに、ローマ時代における大理石や彫刻の流通や、古代における彫刻の修復についても研究を進めた。またローマ時代の浴場遺跡やその出土彫刻に関しては、山梨県立美術館ほかで開催中の「テルマエ展」の図録や関連講演会などで広く一般に紹介することも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、最終年度の前年までに現地調査を終える予定であったが、コロナ感染時の対応などを考えて2022年度にイタリア、2023年度にギリシアの調査を行うのがやっとであった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2024年度には、トルコでの現地調査に加え、国内での研究会開催や海外での研究発表などを行い、成果発信に努めたい。
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