研究課題/領域番号 |
20K00186
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷古宇 尚 北海道大学, 文学研究院, 教授 (60322872)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | フランシスコ会 / 殉教 / パリ外国宣教会 / 再宣教 / ピウス9世 / 再布教 |
研究開始時の研究の概要 |
13・14世紀のキリスト教宣教の図像について、特に殉教場面に注目しながら、包括的な調査を行うものである。また当時、宣教の対象とされたカフカスやインド・中国の宗教的状況を踏まえつつ、こうした地域を描く、あるいはこうした地域に残される美術作品を通して、東西交流について考察する。さらに、日本のキリシタン時代の殉教を描いた場面など、大航海時代以降に制作されたアジアや中南米に残される宣教・殉教の図像との比較を行う。
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研究実績の概要 |
コロナ以来、またウクライナ情勢により中国やロシアなどでの現地調査が難しいため、当初の計画を修正し、モンゴル時代のフランシスコ会による宣教と殉教の図像とその時代背景を中心的なテーマとしながらも、13~14世紀に地中海北東岸のキリキア地方にあったアルメニア王国や、日本におけるキリスト教の再宣教期である19世紀半ばから後半の作例に特に注目して調査を行った。 アルメニアについては具体的に、ヴェネツィアにあるアルメニア・カトリック(メキタリスト)のサン・ラッザーロ・デイ・アルメーニ修道院とエレバンのマテナダラン文書館で、主にフランシスコ会士でもあったヘトゥム2世の時代の写本などを調査し、同時代のイタリア絵画との関係を考察した。これまで指摘されている両者の様式的な類似だけでなく、殉教の図像においても影響が見られることを指摘した。アルメニア美術一般に関しては、フィレンツェの美術史研究所で文献の調査を行った。 日本の再宣教期の作例としては、長崎・大浦天主堂の《二十六聖人殉教図》《元和の大殉教図》を取り上げ、これらがフランスのセシル=マリー・トレルによる1869年と1870年の作であることを確定し、この女性画家の生涯と画業を同時代資料を基に再構成した。アヴァンギャルドとアカデミズムのはざまにあるこうした忘れられた画家が、世俗化の時代を生き抜こうとしたカトリック教会の美術戦略を担っていたことは大変興味深い。日本の宣教を担当したパリ外国宣教会と付属のIRFA(フランス・アジア研究所)で、展示や宣教師の書簡の調査を行った。当時の教皇ピウス9世は極めて反動的だったと普通考えられるが、イタリア統一の中で教皇領を失い、困難な時代にあって教会を立て直そうと努力したとも言える。長崎の二つの殉教図を出発点に、19世紀の「世俗化の時代におけるキリスト教美術」というより広いテーマに展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでコロナとウクライナ情勢のため、国外での調査を延期しており、インドやペルーなど当初予定していた調査で実施していないものが多くを占めている。研究計画を修正し、アルメニアや日本の殉教図に調査の中心を移しているが、研究期間を延長したものの残り1年となり、作品調査がやや不十分である。 オンラインを利用したデータベースや文献の調査は十分行ってきたので、今後アルメニアや韓国、ベトナムで美術作品などの調査を進めて、研究のまとめを行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
キリキアのアルメニア王国と同時代のイタリア美術との関係については、地中海地域におけるビザンティン美術、特にコンスタンティノープルの中央様式と地方との関係を(その政治的な文脈を含めて)考察するのに格好の事例となる。エルサレムにあるアルメニア教会は装飾写本の主要な所蔵先であるので、中東情勢を見極めながら、できれば現地での調査を行いたい。また、ローマとコンスタンティノープルの間に揺れるアルメニアの政治と宗教の文脈の内に、アルメニアとイタリアの美術の関係を位置づける方向である。 日本の再宣教期については、殉教が日本の浦上四番崩れ以上に強烈な事件として記憶される韓国とベトナムを比較の対象に加え、18世紀末~19世紀後半にかけてのパリ外国宣教会の活動と殉教の図像の関連について調査することを予定している。また、初期キリスト教時代からフランシスコ会など托鉢修道会が生まれた中世後期、さらには大航海時代から東アジア再宣教期までをも視野に入れた殉教の図像の流れを跡づけることを試みる。
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