研究課題/領域番号 |
20K00198
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 名古屋大学 (2021-2022) 国際ファッション専門職大学 (2020) |
研究代表者 |
須網 美由紀 名古屋大学, 人文学研究科, 共同研究員 (60567006)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 東西教会合一 / ヴェネツィア / ルネサンス美術 / キリスト教美術 / ビザンティン |
研究開始時の研究の概要 |
ギリシア正教会とローマ・カトリック教会の合一という理念が美術作品に与えた影響は、15世紀のフィレンツェ、ローマ、イタリアの地方都市やフランスなどの作品について既に指摘されているにもかかわらず、同時代のヴェネツィアの作品については看過されてきた。本研究では、15-16世紀ヴェネツィアにおいても、東西教会の合一という理念が美術作品に波及したかどうかを調査・検討し、美術作品の受容者であるヴェネツィア共和国政府や聖俗のヴェネツィア国民の「東西教会合一」に対する関心がどのようなものであったかを、同時代の関連史料などから明らかにする。
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研究実績の概要 |
ギリシア正教会とローマ・カトリック教会の統一(以下「東西教会合一」)という理念が、15世紀のフィレンツェ、ローマ、イタリアの地方都市やフランス等の美術作品に与えた影響関係が指摘されているにもかかわらず、ヴェネツィアの美術作品については、これまで等閑に付されてきた。本研究では、ヴェネツィアにおける「東西教会合一」という理念が与えた影響の諸相に関して、15世紀から16世紀始めを中心に、美術作品自体と美術作品をとりまく政治的・社会的・宗教的なコンテクストの両面から歴史的に検証することを目的にしている。 一方の面である、本理念と実作例の影響関係については、令和5年3月にフィレンツェとローマにおいて、「東西教会合一」を象徴すると既に指摘されている先行例を再検証するとともに、新たな実作例の可能性の有無を調査した。ヴェネツィアにおいても、本理念を象徴すると想定される実作例の有無を調査し、画像データを収集した。 もう一方の面である、当時のヴェネツィア美術をとりまく政治的・社会的・宗教的コンテクストについては、同時期に、ヴェネツィアの古文書館や美術史専門図書館などにおいて、ヴェネツィアの編年史(クロニクル)、ヴェネツィア共和国元首などの演説、日記、宗教行事記録、およびキリスト教の著作や説教集などの文献資料の調査・収集を行った。 また、交付申請書の「研究実施計画」に記載したように、最終年度には、博士論文と補助事業期間の4年間におよぶ研究成果をまとめ、「ヴェネツィア、サン・ジョヴァンニ・クリゾストモ聖堂の装飾プログラム」に関する研究の集大成として、著書の刊行を目指している。その一つの柱となる本聖堂ベルナボ礼拝室に関する論文が国際学術雑誌Arte venetaに公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで新型コロナウイルス蔓延にともなう渡航制限により中止せざるを得なかった、イタリアでの現地調査や資料収集を、年度末に1ヶ月間、ヴェネツィア、ローマおよびフィレンツェで実施した。今回、以下の2点を軸に調査を進めた。 1)本研究課題を遂行するうえで前提となっている、「東西教会合一」を象徴すると想定される実作例の有無を調査し、画像データを収集した。並行して画像データの分析・考察を行ったが、現在のところ、すでに指摘されている以外の実作例を発見できていない。 2)ヴェネツィアの古文書館や美術史専門図書館などにおいて、日本で入手することが困難であった「東西教会合一」に関連する文献資料を調査・収集し、解読に着手した。 1)の調査状況から、交付申請書の「研究実施計画」に万一の場合として記載したように、ビザンティン帝国と密接な関係にあったヴェネツィアにおいて、何故「東西教会合一」を象徴する美術作品が見出されないのかという理由を考察しなければならなくなる可能性が想定されるため、「やや遅れている。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ヴェネツィアを主とするイタリアでの現地調査で得られた画像データおよび文献資料の分析・考察や解読を継続発展させる。今後の研究の推進方策として、大きく以下の3点を実施する。 1)主にヴェネツィアの美術館や教会堂などにおいて調査・収集した美術作品の画像データを整理し、データベースを構築する。現在のところ、ヴェネツィアにおける個々の作品については、「東西教会合一」という理念を象徴する例が見出されないため、聖堂内に設置された複数の作品へと視野を拡げ、それらの作品全体で本理念を象徴するかどうかを検討する。具体的には、15世紀からヴェネツィアへ移住してきたギリシア人たちが、東方典礼を行うことを許可されたローマ・カトリック教会内の作品を中心に考察を行う。 2)古文書館や美術史専門図書館などで調査・収集した、ヴェネツィア編纂史(クロニクル)、ヴェネツィア共和国元首などの演説、日記、宗教行事記録、およびキリスト教の著作や説教集などに関する文献資料を解読・考察し、受容者であるヴェネツィア共和国政府や聖俗のヴェネツィア国民の「東西教会合一」に対する関心の度合いを把握し、「東西教会合一」との相関概念について検討する。 3)1)で完成したデータベースをもとに、フィレンツェやローマなどで制作された「東西教会合一」を象徴する先行作品との比較・検討を通じて、ヴェネツィア美術の図像的特質を明らかにする。他方、本理念を象徴するヴェネツィアの実作例が見出されない場合は、その理由について考察する。
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