研究課題/領域番号 |
20K00205
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪 |
研究代表者 |
内藤 直子 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 係長 (70270725)
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研究分担者 |
岩佐 伸一 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 主任学芸員 (70393288)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 刀装具 / 大月派 / 京都 / 後藤家 / 装剣金工 / 文人 / 金工 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は江戸時代後期の京都で、鐔などの刀装具(刀剣の外装金具)を制作した装剣金工の大月光興に着目し、武用から一線を画した、いわば「文人金工」と呼ぶべき美術史的な存在として位置づけることを目指すものである。 「図案」よりも「筆致」の再現に強い関心を示す光興の作風は、武家の腰物としての刀装具として異質なものである。その性質の背景にあるのは、彼が交流した同時代の文化人や、作品を発注した発注者層の違いではないかと考えるに至った。本研究では光興を特徴づけるキーワードを「文人」とし、その活動がどのような文化的諸相に根差しているのかを作品の再評価や文献調査により明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
コロナが落ち着き、ようやく各地への調査が行いやすくなった本年であるが、その最大の成果は、長年探し続けていた大月光興作「地獄図鐔」の所在を確認し、調査を行うことができたことにある。縦10.0㎝横8.5㎝、厚さ0.4㎝の真鍮槌目地の鐔は、近江商人として知られた初代中井源左衛門(光武)の子で京都に店を持った中井武成の注文により、文政五年に制作されたものであり、名著『鏨廼花』第二巻の巻頭を飾った作品としても知られる。武成は京都の趣味人としても知られていたようで、光興も所載される『平安人物志』には蹴鞠の項に載る。作品は一転して地獄の図であり、そこには光興らしいアイロニーが潜む。この解釈については検討の上、本研究の報告書にて述べたいが、発注者の意図というものがどう絡むのかという点において、「発注者」と「制作者」が作品表現に与えた影響を考える上でも重要な作例である。中井武成は同時期に京都の後藤一乗に来迎図の揃金具(重要文化財)を注文制作させており、一連の制作意図は中井家側からも追う必要があるだろう。 また史料調査においては、平成29~31年度にかけて実施した科研費研究により既に取得していた『鏨廼花』編纂史料(京都国立博物館蔵)に含まれる大月家関連の史料を再検討し、新たな発見を得た。従来大月家の家系は大月光林-光恒―光芳―光興と続くとされてきたが、光恒と光芳の間に光室という人物がいることがわかった。これについてはかつて絵画研究者の松原茂氏が光興筆の絵画作品の印文に「光林五世嫡」とあることから従来説では一代ずれることを指摘されていた(「金工の絵画 光興・一乗・夏雄」『此君』第10号、平成31年)。同印はこの「五世」を裏付ける発見でもある。これらの詳細は、最終年度の報告書にて執筆する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で十分な調査活動が行えなかった時期が続いたが、今年、長年公開されることもなく、所在も不明であった大月光興の代表作「地獄図鐔」の調査が叶ったことは大変大きな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
申請年次では残り2か年となったが、まずはコロナ禍で遅れた2年分の調査活動を行うことが喫緊の課題である。 作品検討においては、大月光興の代表作であり、かつ制作活動の中で突出した個性を放つ「地獄図鐔」の評価を足掛かりとして光興の文人性について追求するとともに、光興作品の最大の収蔵先である根津美術館での調査を行い、その全体像を明らかにしたい。 作者大月光興をめぐる動向については、周辺人物を含めて調査する必要があるため、広範囲の史料・文献調査を行う予定である。 最終年次には報告書としての論考をまとめる予定だが、上記調査の進捗によっては時期がずれこむ可能性もある。
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