研究課題/領域番号 |
20K00206
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
|
研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
富岡 優子 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (20508957)
|
研究分担者 |
北澤 菜月 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 室長 (10545700)
大橋 有佳 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10804388)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 藕糸 / 大賀一郎 / 大隈三井子 / 伊逹弥助 / 藕糸織 / 當麻曼荼羅 / 中将姫 / 黄檗 |
研究開始時の研究の概要 |
藕糸織(ぐうしおり)は蓮の繊維から作られた糸(藕糸)を使用した織物である。植物学者大賀一郎は寛文11(1971)年の黄檗宗開祖・隠元隆琦の賛を有す福聚寺(北九州市)の「藕糸織仏画」を日本最古の藕糸織と鑑定した。しかし本品が藕糸という科学的根拠は示されておらず、2018年に赤外分光分析装置と実体顕微鏡を用いた非破壊の分析を改めて行った。結果、当該作品は藕糸と絹糸を撚った糸が使用されている可能性がきわめて高いことが判明したが、当該事例のように科学的根拠を伴わない藕糸織が多々ある。 本研究は藕糸織作品について非破壊による再調査を行い、藕糸織がいかなるものか、客観的に提示することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
次の通り、さまざまな藕糸織作品の調査(顕微鏡観察、FTIRによる分析)を行った。また藕糸の採糸も行った。 1.浄土曼荼羅(個人蔵)の調査:簡易な顕微鏡で観察したところ、経糸が絹、緯糸に藕糸の特徴が見受けられた。軸裏には大賀一郎博士の但し書きがあり、同じく経糸が絹、緯糸が藕糸という鑑定であった。制作年は文久4年(1864)とあり、筑前国の妙喜という女性が蓮糸を紡ぎ布を織り、その布に文鷹という京都の絵師に浄土曼荼羅を描かせた作品と判明した。 2.大隈三井子採糸の作品調査:厨子入白衣観音像(西陣織会館、浅草寺、龍泰寺)は大隈三井子が採糸した藕糸で42幅制作されたと伝える作品群である。顕微鏡観察下において藕糸の特徴が確認され、また藕糸に細い絹糸を撚り合わせた糸を使用していることが分かった。西陣織会館所蔵の白衣観音蓮池水禽図(3幅)については中央の観音幅のみ藕糸が使用され、蓮と水禽が織り出された左右幅は絹のみ使用されていることが確認された。 3.観音菩薩像、観音菩薩名号の調査:浅草寺に所蔵される藕糸作品の顕微鏡観察、FTIRによる調査を行った。大正元年(1912)年銘の観音菩薩像は基底材の経糸が絹、緯糸が藕糸であることが分かった。宝暦3年(1753)銘の名号「南無大慈大悲観世音菩薩」は紺の絹地(八枚繻子)に藕糸で刺繍がされていることが判明した。ただし「宝暦三癸酉歳吉月」の刺繍部分は絹であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各地の藕糸作品の調査が進んだ。また大隈重信の母である三井子が採糸した藕糸織作品を各所で調査した。新たな藕糸織の情報(個人蔵、浄土曼荼羅)もあり、藕糸を使用した作品には様々なバリエーションがあることが分かってきた。まだ発表には至っていないが、研究は確実に進んだと言える。 また、藕糸の採糸も行った。時期が悪かったせいか多くの糸は取れなかった。糸の量が取れなかったために織の実験には至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年は最終年度であるため、これまで行ってきた藕糸織作品の調査結果について、論文や学会などでの報告を進めていく。 また藕糸の採糸については、毎年採糸を行う中で、比較的若い柔らかい茎からは多くの糸が引き出され、固くなった茎からは糸がほとんど出ないことが分かってきた。早い時期と遅い時期で糸の採取量の比較実験を行う予定である。
|