研究課題/領域番号 |
20K00212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
小椋 聡子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (80832542)
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研究分担者 |
赤沼 潔 東京藝術大学, 美術学部, 名誉教授 (30267687)
桐野 文良 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 名誉教授 (10334484)
塚田 全彦 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (60265204)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 美術工芸 / 美術鋳物 / 銅合金着色 / 着色技法 / おはぐろ |
研究開始時の研究の概要 |
研究の概要 美術工芸、特に「金属工芸(金工:鋳金技法、鍛金技法、彫金技法)」の分野において、着色技法は作品表面を色彩豊かに表現する手法として重要な役割を担う。そのひとつに各地で伝承されてきた「おはぐろ(お歯黒)(鉄漿)」着色がある。現在も美術金工作品の色調表現として使用されているだけでなく、文化財美術品の保存修復や復元においても重要な要素となる。本研究では、各地の 「おはぐろ」着色液の組成および着色工程を系統的に調査するとともに、分析技術を用いて着色層の色調発現機構を解明する。さらに得られた知見を活用し、銅合金試料への着色再現を実施する。
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研究実績の概要 |
美術工芸、特に「金属工芸(金工:鋳金技法、鍛金技法、彫金技法)」の分野で、着色技法は作品表面を色彩豊かに表現する手法として重要な役割を担う。そのひとつに日本各地で伝承された「おはぐろ(お歯黒)(鉄漿)」着色がある。この技法は、現在も金工作品の色調表現の使用のみならず、文化財・美術品の保存修復や復元においても重要な要素となる。しかし「おはぐろ」着色で表現する色調を定量的に評価した研究例はなく、各地に伝わるレシピと生活背景の関係性も未だ不明な点が多い。そこで本研究は、金工作品の目的の色調を伝承内容や感覚的判断の部分に対し、定量的な評価とアーカイブを作成し安定した色調表現と着色技法の確立と保存を目的とする。具体的には(1)「おはぐろ」着色液の作製方法と色調や着色工程、生活背景との関係性に関する現地調査、(2)銅合金試料の着色層の解析並びに分析技術を用いた色調発現機構の解明、(3)銅合金を用いた実技的再現を実施項目とする。 今年度は①各地の「おはぐろ」着色液に用いる材料および技法の調査、②金工の着色再現のための試料作製を行った。①は各地の視察・調査を計画していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響は概ね緩和されたものの、治療薬等の確立には至っておらず、以前とは異なる対人での配慮等も必要なため、昨年度までと同様に実施を控え、再度計画を練り直した上で実施することとした。そのため、文献による各地の食や生活背景、特に日本酒等の生産と、「おはぐろ」着色液の材料の関連性についての調査を継続した。また、②は銅合金を素地とした試料の作製を継続して行うとともに、着色を行う前の素地の前処理条件を検討した。鋳造した素地は表面の酸化被膜の除去と着色剤との適切な反応を生じるための研磨等の前処理が必要で、適切な条件を検討した。また着色剤に用いる材料の収集も行い、着色の予備的な実験にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、申請時に計画した美術金属工芸の銅合金着色技法に用いられる「おはぐろ」着色液の各地の食や文化を背景とした実態調査に基づく銅合金を用いた試料の再現を計画通りに十分に達成することはできなかった。年末には新型コロナウイルス感染症の治療薬が承認され、その影響はかなり緩和されてきたが、治療薬の重症度の高い方への有効性は確立に至っていないほか、重症化リスク因子のある軽症の方に対する重症化抑制効果は裏付けられていないことなど、対策が十分に確立されたとは言い難く、調査対象地で調査・見学する際には以前とは異なる配慮等も必要であり、当初予期していない状況が続いた。特に技法の伝承者にはご高齢の方が多いため感染症対策を施した上で、十分な聞き取り調査、工程や出来上がりの状況の詳細な観察を行う事がまだ難しいと判断した。そのため、今年度も文献による調査が中心となり、各地の食や生活背景から「おはぐろ」着色液に含まれる材料が選定された理由を検討したが、計画していた調査の実施による再現試料の検討や比較が十分には実現できておらず、大幅に遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
美術工芸の金工作品に「おはぐろ」着色液を用いた色調を表現するには、着色液の濃度のみならず、着色技法の工程環境、添加物の種類や着色液の作製の工程(温度・湿度)など多くの因子が大きく関与している。「おはぐろ」着色液に含まれる材料や着色工程自体は、各地に基づいた生活背景から個別に発展を遂げているが、系統的な比較ならびに科学的な検証がなされておらず、また、後継者不足による着色技法の消失も昨今意識しなければならない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策の状況は治療薬の開発などが進み、根絶には至らないものの、影響は大幅に緩和され、社会活動も概ねもとに戻りつつあることから、十分に安全面を確保した上で各地の「おはぐろ」着色液に関する実態調査を速やかに行いたい。「おはぐろ」着色が現在も伝わる地域に赴き、現地に伝わる手法とそれによる発色を直接調査・実見できることが望ましいが、計画の遅れも鑑み、現地調査を絞って行う事を検討する。また、現在までに把握することが出来た情報に基づいた試料の作製に着手している。それに基づいた定量的な評価方法の検討も進めており、これを早急に確立して、再現実験のための作製と試料の観察・分析を即座に進める。
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