研究課題/領域番号 |
20K00214
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
丸田 伯子 一橋大学, 保健センター, 教授 (50343124)
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研究分担者 |
東 ゆかり 鎌倉女子大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (60442133)
満山 かおる 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (80791681)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 音楽療法 / 集団療法 / 弦楽器ライアー / 人智学 / シュタイナー / POMSによる心理的評価 / 人智学的音楽療法 / シュタイナー教育 / 芸術療法 / ライアー / 認知症 / 発達障害 |
研究開始時の研究の概要 |
ライアー(弦楽器)を用いた「人智学的音楽療法」の臨床的な意義について明らかにした上で、日本の医療機関や教育現場などにおいて音楽療法の実践可能性を検討する。対象は軽症の精神障害や発達障害、認知症などの身体障害を有する人々を想定している。音楽療法を広く臨床医学に取り入れて音楽療法が医学的治療とともに根付いて実践されているハーフェルヘーエ総合病院(ベルリン)にて訪問調査を行い、多様な心身の不調への治療的な効果を分析し、新たな音楽療法の普遍的な意義について明らかにする。
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研究実績の概要 |
研究計画に基づき、精神科医療機関において、倫理審査を経て、入院と外来の患者を対象に参加者をリクルートし、参加者の研究同意を得た。covid-19の感染対策をするために入院患者と外来患者は別々に行うこととして2022年9月から12月まで、概ね週1回のペースで毎回45分間、計10回の集団音楽療法を実施した。実施するにあたり、音楽療法を担当する講師としては人智学的音楽療法の実績を有するアントロポゾフィー音楽療法士に依頼した。参加者は31名であり、うち入院が14名、外来が17名であった。また年齢層は19歳から74歳、性比は男性14名、女性17名であった。診断名は気分障害、発達障害が中心であった。参加者したスタッフは、音楽療法士、公認心理士、医師が各1名、心理もしくは看護の実習生2名であった。 心理検査としてPOMSを選定し、音楽療法の実施前後にPOMS短縮版に記載してもらった。POMSには8種の評定尺度がある。これらの尺度を数値化し、実施前後に得られたT得点を検討した。評定8尺度のうち、7尺度において、療法参加の前後で比較したT得点の平均値に有意な差が認められた。有意な差を認めなかった尺度は活気・活力の項目であった。有意な差を認めた7尺度のうち、6尺度はネガティブな尺度(怒り・敵意、混乱・当惑、抑うつ・落ち込み、疲労・無気力、緊張・不安)であるが、これらは音楽療法実施後に有意に低下した。ポジティブな尺度(友好、活気・活力)は実施後に上昇しており、友好については有意であった。 参加者は必ずしも全回参加ではなかった(途中で退院や就労に至ったケースも含まれる)。一部の患者は4回以上参加したが、彼らは活気・活力及び友好が上昇する傾向があった。このような音楽療法の場があることで、繰り返し参加する群の場合、集団療法として心理的に意義のある時間・空間の提供となることを示唆すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度から2021年度まではcivid-19の感染対策を最優先すべき事態となっており、海外での調査も渡航や医療機関の制約により中止せざるをえず、国内においても医療現場での音楽療法の実施について許可を得ることが困難であり、研究計画の大幅な見直しが必要となった。しかし2022年度以降は徐々に医療機関において外部機関の立ち入りが感染防止策を徹底して行うことを条件に許容されるようになったため、集団音楽療法を実施することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
医療機関における集団音楽療法を実施することについて、特定の医療機関をフィールドとして継続できる可能性があることがわかった。そのためには特定の医療機関において空間と時間を確保するという構造的な可能性、また参加者の音楽療法に対する動機やニーズの把握、集団音楽療法を実施した後の主観的ないし客観的な意義、などが着目すべき観点と考えられる。これらの視座を併せて、これまでに得られた成果をもとに原著論文を作成する予定である。
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