研究課題/領域番号 |
20K00215
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
清水 香 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (30599436)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 泥漿 / 磁土 / 成形技法 / EPMA / 石膏型 / 現代陶芸 / 成形技術 / 技法 |
研究開始時の研究の概要 |
元来、陶芸造形の技法には手びねり成形やタタラ成形、轆轤成形、型成形という可塑性をもつ粘土での成形が中心となっている。これに対し工業的陶磁器製造にみられる鋳込み成形は、泥漿と呼ばれる泥状の磁土を用いて成形している。泥漿は液体であるため型の形状によって完成品の形が決まるが、研究代表者の着目した点は型に沿わせずに泥漿自体が形をつくり出すことが可能なのではないかという点である。すなわち、伝統技法に用いられる粘土=個体と工業的陶磁器製造に用いられる泥漿=液体の中間状態の土=可塑性をもつ流動体によって、現代の人の心に直接語りかけるような有機的形体をつくり出すことが可能なのではないかと考える。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、泥漿を用いた現代的成形技法における諸問題の解決を目指し、泥漿に適している陶磁器用坏土の分析を行った。昨年度は素地の厚みのばらつきによる亀裂や破裂、歪みの原因を探るため東日本の陶磁器産地の磁土と西日本の陶磁器産地の磁土を比較し、それぞれの性質を分析した。しかし、素地の厚みの差異により薄い部分に大きな負荷がかかり、大きな歪みが生じる原因を突き止めるには至っていなかった。そこで、本年度は磁土の歪みを防ぐ方法を探るため、土が何度まで火に耐えられるのか、素地の耐火度実験を行った。調査試料は、泉山陶石場をもつ西日本の磁器産地である佐賀県有田焼や長崎県波佐見焼で使用されている佐賀県嬉野市の陶磁器原料と東日本の磁器産地である瀬戸焼で使用されている愛知県瀬戸市の磁器土であり、長崎県窯業技術センターで耐火度試験を行った。分析結果から、嬉野市で精製されている磁土はSK28であり、瀬戸市で精製されている磁土はSK32であった。すなわち、陶石質である有田焼・波佐見焼磁土は、長石質である瀬戸焼磁土より火に弱いことがわかった。 また、亀裂や破裂を防ぐ方法として、これまでの研究で明らかになった「締め」の必要性の他、焼成方法についても着目し、焼成方法の実験を行った。実験結果から、焼成時にアルミナボールを敷くことで成形物が1㎜ほど浮き、焼成物の下部へ均等に熱が加わるようになるため亀裂や破裂が起きないことがわかった。 今後は、まだ行えていない両磁器土の粒度分析を長崎県窯業技術センターで行う予定にしており、分析値から陶石質磁土と長石質磁土を比較し、流動性と可塑性を併せ持つ泥漿にはどちらが適しているのか比較、検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、陶磁器産地である長崎県窯業技術センターへ赴き、陶磁器原料の調査・分析を行った。東日本の陶磁器産地の磁土と西日本陶磁器産地の磁土の耐火度を比較するため、瀬戸焼の坏土と有田焼の坏土を用いて分析した。長崎県窯業技術センターでは引き続き技術相談と鹿児島県工業センターではできない専門的な化学分析を引き受けてくださることを確認した。 本来は粒度分析まで行う予定であったが、現在、鹿児島県工業センターには窯業部門の専門員が不在であることから、他県に依頼するために時間を要し、今年度は実験することができなかった。また、比較対象とする坏土の種類を増やす必要性が生じたが、成果物の発表準備に時間を要したため調査へ行く日程が組めず、次年度の課題として残すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、新型コロナウィルスの感染拡大により県外への調査が遅れていたが、本年度は調査へ行くことができた。引き続き長崎県窯業技術センターや鹿児島県工業センターで調査や実験を行うとともに、陶器産地と磁器産地の成形技法の精査も行っていく。実験内容については、粒度の違い、解膠剤の種類と添加量、焼成色見、金属酸化物の含有量を中心に実験結果を数値化する。また、成形技法の精査の方法として、資料館や窯業試験場、作家工房の訪問により、伝統的に受け継がれてきた技法と、量産を求めた工業的技法の2つの面から、その役割と方法、適した材料について調査する。その際、課題を多く抱えている産地の現状も聞き取り調査する。 分析結果から導き出された原料や成形方法、焼成方法を用いた成果物を、展覧会などを通して発表する。
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