研究課題/領域番号 |
20K00228
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
麻生 弥希 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (90401504)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | デジタル線描抽出 / 法隆寺金堂壁画第六号壁 / 東洋絵画の線描 / 文化財 / 線描抽出 / 東洋絵画 / 線描 / デジタル / 粉本 |
研究開始時の研究の概要 |
写真技術が発達した今日において、文化財の記録は模写に変わり、写真によって記録されることが通例である。しかし、写真は線描や彩色などの図像と共に剥落やよごれなどもすべて同列に記録されることから撮影時の詳細な記録としては優れているが、劣化の著しい作品においては本来の図像が判別しにくい状態も散見される。本研究では文化財の写真から、画家の目を通したデジタル加工を施すことで写真資料に内包される図像を読み解き、芸術性を回復した情報として後世に継承することを目的としている。東洋絵画の重要な構成要素である線描に着目して、デジタル化された画像から線描を抽出してデジタル粉本として後世に継承することも試みる。
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研究実績の概要 |
東洋絵画の記録は、古来は絵師が線描を写しとることで図像の継承が行われて来た。絵師によって写しとられた図像は、剥落やシミなどの図像として重要でない情報は精査される反面、絵師の個性や能力による影響が出やすい。近代以降、写真技術が発達してからは文化財の記録は写真が一般的となった。写真による記録は正確さと客観性を有する反面、剥落やシミなども図像と同等に記録されることから、劣化が著しい作品の場合は図像が識別しにくい場合もある。しかし、光学的に記録された写真を熟視すると、目視では劣化が著しく図像を識別することが困難であった部分から、図像の情報を読み解くことができる場合もある。こうした作品の中にはオリジナルが失われたものもあり、記録が唯一作品を知る手がかりであるが、記録すらも経年劣化の危機に直面している状況も散見される。 本研究ではこうした文化財の写真記録から絵描きの視点で図像を読み解き、デジタル上で線描を抽出して後世に継承することを試みる。対象作品として、法隆寺金堂壁画第六号壁のコロタイプ印刷を選択した。 令和4年度までの成果としては、同作品からデジタル線描抽出を行なった。本作品は図像が明確に残る部分と、剥落している部分があるが、剥落した図像の一部から線描の痕跡を確認することができる。痕跡が確認される部分の図像を復元して実線と融合することで、コロタイプ印刷が内包する情報を引き出して分かりやすい情報として継承することを目指している。 美術史的な図像起こしの線描は制作者の解釈を交えない、肥痩のない線描で行われることが通例であるが、本研究では可能な限り原本の写真の線描を抽出することで、東洋絵画の芸術性を持った線描を目指した。ガラス乾板の撮影が行われる以前に制作された、桜井香雲と鈴木空如の模写を参考にすると共に、指先などの細部においてはアジャンタ石窟壁画の諸尊の描写を参考にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象作品のデジタル線描抽出が予想より困難であったため作業がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
対象作品のデジタル白描図像の最終仕上げと、復元を行なった部分についてはその根拠をまとめる予定である。 本研究では根拠が認められない部分については白抜きとして、想定による復元は行わない方針である。 東洋絵画の線描による伝達手法に着目し、シルクロードの遺跡に見られる線描について比較検証を行う予定である。新型コロナウィルスの影響で見送っていた海外調査についても本年度は行う予定である。本研究において線描抽出の対象作品とした法隆寺金堂壁画は、敦煌やアジャンタなどのシルクロードの壁画に起源があることが指摘されている。本年度の調査では更に西方に位置し、6世紀から7世紀の同時代頃の制作と言われるソグド壁画の視察を行う予定である。ソグド壁画は日本では文献等の資料は比較的入手可能であるが、線描を確認できる画質の画像を入手したいと考えた際に、十分とは言えない状況である。ソグド壁画が各地の博物館などに保管されているウズベキスタンは現在治安も良いことから視察の候補地として予定している。
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