研究課題/領域番号 |
20K00231
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
|
研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
山名 仁 和歌山大学, 教育学部, 教授 (00314550)
|
研究分担者 |
筒井 はる香 同志社女子大学, 学芸学部, 准教授 (20755342)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | ショパン / ペダリング / プレイエル / ダンパー / アーティキュレーション / アスタリスク / ウィーン式フォルテピアノ / シンコペート・ペダル / 通奏低音 / モダンピアノ / フォルテピアノ / フレージング / アクセント記号 / ピリオド楽器 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀前半の作曲家でショパンほど詳細にペダル記号を書き込んだ作曲家はいない。ところがその記号の位置が、現代のピアノにおいて一般的に用いられているペダル法とは大きく異なっていることから、現代のペダル法にほとんどの箇所が置き換えられ、演奏されている。本研究においては、彼の記したペダル記号の位置をショパンが生きていた時代のピアノによって正しく再現し、そのペダル法の意図を解明する。
|
研究実績の概要 |
2023年8月フォルテピアノ修復家として著名なオランダのEdwin Beunk氏を訪問し、氏所蔵のPleyel(1829)を試奏した。本試奏の意義は、ダンパーの形状がこの年代のプレイエルの特徴とも言えるモップ型を止めており、ダンパーの止音効果とアーティキュレーションとの関係について調査することができたことである。この時代のグランド型プレイエルのダンパーがオリジナルの形状を止めていることは貴重である。例えば浜松市楽器博物館のPleyel(1830)のダンパーはこのモップ状の形態を止めておらず、止音効果のより高い後年の形状及び材質のものに取り替えられている。ちなみにこのモップ状のダンパーはやはりこの時代のブロードウッドと共通しており、残響の豊さも同様に共通していた。なおこのモップ状のダンパーの重要性については、共同研究者とともにピアニーノの調査報告として日本音楽学会において発表している。 今回の調査において明らかとなったことは、①ダンパーの形状が長方体やウエッジ形である40年代のグランド型プレイエルと比較して、残響が豊かである、②アスタリスクの位置が明らかにシンコペーテットペダルを想定していないショパンのペダリングの意図について、明確にグランド型のプレイエルで確認できた、の2点であった。これまでピアニーノのみで確認できていたショパンのペダリングの意図は、ダンパーの形状が長方体やウエッジ形のグランド型プレイエルにおいては(後年の改造型も含む)再現が非常に難しかった。しかし、これは楽器の構造のみに要因があるわけではなく、ダンパーの形状の問題にも起因することが今回確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で、国外の楽器調査が遅れ、演奏録音の方針がなかなか定まらなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
エドウィン氏の弁によれば、モップ状のダンパーはPleyel(1836)まで確認したことがあるとのことだった。従ってグランド型プレイエルにおいてはこのダンパーの形状の移行がショパンのパリ定住以降比較的早くから起こっていたことが考えられる。一方でこれまで研究代表者が年代別にショパンの作品を演奏比較している実感では、ペダリングの指示法に明確な変化というものは見出すことができていない。従って次のようなことが考えられるであろう。①長方体やウエッジ形のダンパーの特質は移行期においてはモップ状のダンパーと大幅に異なることのない特質をもっていた。つまり現在のグランド型プレイエルのダンパーは後年より止音効果の高い機能を持つ現代のダンパーあるいはそれに近いものに付け替えられている可能性がある。②形状の違いによる止音効果のギャップは当初から起こっていたが、ショパンはペダルの切り上げ方を柔軟に変化させることによってこれに対応していた。 このどちらの考え方が妥当と言えるのかについては今後の課題である。しかし、①については現在その根拠を示す資料が見つけられていない状況であることから、②を想定して研究を進めていくことが妥当であると考えている。本年度末には研究代表者所蔵のpleyel(1841)によって、特にペダルを踏む指示が書かれていないことが演奏効果と密接に関係していて、現在のペダル指示のない箇所にも満遍なくシンコペーテットペダルを用いる奏法と明確な演奏効果の違いが提示できると考えられるプレリュードOp.28、バラードOp.38、スケルツォOp.31、バルカローレOp.60を録音することを予定している。
|