研究課題/領域番号 |
20K00237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
森 立子 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (40710843)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | バレエ音楽 / バレエ / オペラ / アーカイブ / 舞踊史 / ドン・キホーテ / 舞台芸術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、バレエ音楽の特殊性を考慮したアーカイブの在り方について検討し、バレエ音楽アーカイブの一つのモデルを作成することを目指すものである。バレエ音楽は「実用音楽」の性格を持ち合わせており、それがゆえに作品本来の「オーセンティックな姿」は存在しない。それはむしろ「多数のヴァージョンの総体」として捉えられるものであり、アーカイブ構築に際しては、この「総体」のどの部分をどのように整理して提示するかが問われることとなる。資料研究、インタビュー等を通じてこの問いにアプローチした上で、バレエ音楽アーカイブの一つのモデルを作成することが本研究の到達目標となる。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、「バレエ音楽アーカイブ」構築の前提条件となる「バレエ音楽」の定義をさらに精緻化する作業を進めた。その際に、①16世紀末の宮廷バレエの時代から今日に至るまでの「バレエ」の様態がどのように変化してきたのか、②各時代の「バレエ」において、音楽がどのような機能を持つものとして捉えられ、またそういった理念が実際にどのような形で具現化されていたのか、という二側面からの考察を行った。 これらの問題について調査・分析を進めることにより、18世紀中葉のバレエ改革期を転換点とした「バレエ」の在り方(つまりは「バレエ」の定義)の根本的な変容を確認するにいたった。すなわち、宮廷バレエの時代から18世紀中頃までの「バレエ」は総じて、舞踊と器楽だけでなく歌も含む形で作られていたが、バレエ改革期に「劇としてのバレエ」が志向され、一貫したストーリーや登場人物の情念を舞踊によって表現することの重要性が強調された結果、言語的情報を含む歌を用いず、舞踊と器楽のみによって一つの作品を構成する方向への転換が進んでいったのである。19世紀に入るとこの傾向は一層顕在化することになるが、その一方で、特にフランスにおいては、オペラ作品の中のバレエ場面が一定の重要性を付与されつつ創作され続けてもいた。 こういった歴史的経緯をふまえ、あらためて「バレエ音楽アーカイブ」の問題に立ち返ると、バレエ改革期以前の「バレエ音楽」とそれ以降のものとを大別した上で、アーカイブのための情報を整理していく必要があること、また、自立的なバレエ作品と、オペラの中のバレエ作品とを別のカテゴリーで扱う必要があることが理解される。この点と、「機会音楽としてのバレエ音楽の特殊性」という点とを合わせて考慮しつつ、アーカイブ構築に際して生ずる問題の整理という最終的な作業を今後行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍を経て、研究開始当初の計画に大幅に修正を加えつつ作業を進めている。今年度予定されていた主な作業は、①バレエ音楽全般に関する文献資料、楽譜資料の所蔵調査・収集(前年度より継続)、②宮廷バレエの時代から19世紀までの「バレエ音楽」の概念とレパートリーの調査・分析、③海外図書館に所蔵されている(楽譜を中心とした)一次資料の調査・分析、④本研究課題の研究成果のまとめ、及びその公開、の4点である。このうち①~③についてはおおむね予定通り遂行することが出来たが、海外での一次資料調査においてより詳細な検討を必要とする資料の存在が確認されるなど、事前に想定されていなかった状況も生じたため、バレエ音楽のアーカイブ構築に際して生じる問題の整理、およびこれまでの研究成果の公開という最後の作業が残されることとなった。これについては、次年度に取り組むことを予定している。 なお、本研究課題の一環として、研究者、学生、一般を対象とした「バレエ史研究会」を継続的に開催している。2023年度も、6月3日に第8回研究会(「近代化とバレエ」、海野敏氏)、11月18日に第9回研究会(「プティパ・バレエをめぐる3つの視座―ロマンティック様式・ツァーリズム・ペテルブルク―」、髙島登美枝氏)の開催が実現した。この研究会での発表と質疑の内容は、研究代表者自身が報告文書を作成し、ソーシャルメディア上で一般に公開している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、バレエ音楽に特化したアーカイブ構築のための理論的な基盤を整備し、アーカイブモデルを仮説として提示することを最終的な目的としている。これまでに、重要度の高い資料の収集と分析、「バレエ」および「バレエ音楽」の概念の歴史的考察、「機会音楽」であるバレエ音楽の特殊性に関する考察を進めてきており、現時点で、バレエ音楽アーカイブ構築の可能性と限界について論じる材料はほぼ揃ってきている。従って次年度は、本研究課題の最終的なまとめの作業を集中的に行う予定である。すなわち、バレエ音楽のアーカイブ構築に際して生じる問題の整理、仮説としてのアーカイブモデルの提示、および研究成果の公開、という3つの作業を中心に次年度の研究が進められることとなる。 合わせて、研究の社会還元の一環としてこれまで継続的に開催してきた「バレエ史研究会」を、次年度中にも1~2回程度開催する予定である。また、円安の影響等もあり今後の状況を見極める必要はあるが、可能であれば、海外の舞踊関係のアーカイブ(フランス国立ダンスセンターなど)の視察も行いたいと考えている。
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