研究課題/領域番号 |
20K00265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
石川 肇 国際日本文化研究センター, 研究部, 特定研究員 (80596734)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 時代劇 / 衣裳 / 殺陣 / 美術館 / 東映 / 映画 / テレビ / 映画村 / 絵画 / 甲斐荘楠音 / 旗本退屈男 / 京都国立近代美術館 / 東京ステーションギャラリー / 新選組 / 文化庁事業 / 観光庁事業 / 時代劇パネル展 / 時代劇エッセイ / 魔界転生 / 清水次郎長 / 緋牡丹博徒 / 緒形拳 |
研究開始時の研究の概要 |
東映京都撮影所における時代劇「有形無形文化資料」の調査研究を行うもので、研究その他文化産業に資する新資料の発掘整理および、それに伴う価値の見直しと再構築を目指す。ここで言う有形とは「衣裳」のことで、無形とは「殺陣」のことである。調査は、東映京都撮影所および東映太秦映画村の全面協力のもと、時代劇の未整理「衣裳」を探るとともに、新国劇、東映京都、松竹京都に伝わる「殺陣」の型を探る。そしてそれぞれの歴史的意義を追究するとともに、次の構想としてのデジタルアーカイブにつなげる準備を整える。
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研究実績の概要 |
3年計画の最終年度となる2022年度の最大の成果は、2023年2月11日から4月9日の期間、京都国立近代美術館において「甲斐荘楠音の全貌」展を開催したことである。大正から昭和にかけて活躍した日本画家の甲斐荘楠音の回顧展となるが、従来まったく知られていなかった/見向きもされなかった彼の昭和期における映画界での衣裳デザイナー(衣裳プロデューサー)としての活躍までを視野に入れたものとなる。そしてそれは展覧会サブタイトル「絵画、演劇、映画を越境する個性」を十二分に理解し、楽しめるものとなった。予想を大幅に上回る来館者数で、それは甲斐荘の絵画ファンと時代劇ファンの両者が赴いた結果である。そしてその両者が未知なる一方の魅力に気付いた瞬間でもあった。しかしながら、新型コロナウィルスの影響はやはり大きく、協力関係にある京都撮影所の衣裳担当者らに、それまで滞っていた仕事が一気に降りかかり、思うように撮影を進めることができなかった。そんな中、展覧会に必要とされる衣裳だけは探し出し、撮影することができた。時代劇衣裳を最重要展示物として開催された展覧会を、こうした国立美術館が行うことは初めてのことで、しかもそれは、科研費延長(1年目)が決まった2023年度の内容ともなるが、7月1日から8月27日の期間、東京ステーションギャラリーへと巡回することができた。二つの展覧会はともに【主催】が担当美術館と日本経済新聞社、【協賛】が高砂香料工業、【特別協力】が東映、東映太秦映画村、【協力】が国際日本文化研究センター、京都日本文化資源研究所、となっている。大衆文化として軽んじられていた時代劇が、衣裳の美しさと役割とともに「総合芸術」として評価されたことになる。また、展示と同タイトルの図録も刊行され、それに執筆もした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最も大きな理由の一つ目は、京都国立近代美術館において「甲斐荘楠音の全貌」(2022年度)が開催され、次いで東京ステーションギャラリーに巡回展示(2023年度)されたことである。当初計画にはなかったもので、研究成果の社会への還元という点からすれば、これ以上のものはないと考える。また、無形文化財と言っても過言ではない、衣裳担当者の帯結び(「退屈旗本男」主人公だけに適応される独特のもの)も、動画(有形)として保存し、二つの展覧会において映し出すことができたことも大きい。二つ目は、2023年6月よりSNSサービス「x(エックス)」(ハンドルネーム:京都日本文化資源研究所)を用いることにより研究成果を社会に還元している点である。研究には調査研究と社会還元が必要となるが、こちらは後者である。東京ステーションギャラリーにおける「甲斐荘楠音の全貌」がxをスタートさせた時期で、関連する事柄を数多く発信できたばかりでなく、それまで培ってきたの時代劇衣裳や殺陣研究の成果も合わせて発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
科研費延長(2年目)、最終年度となる今年度は、テレビ時代劇衣裳の調査を続けるとともに、真田広之主演『SHOGUN 将軍』の調査研究を行う。『SHOGUN 将軍』は、ジェームズ・クラヴェルの1975年の小説『将軍』を原作としたアメリカの時代劇リミテッドシリーズドラマであり、FX製作、Huluなどで配信され、日本では2024年2月からDisney+で独占配信開始されたもの。1960年代以降、低迷し続けている時代劇映画やドラマにとって『SHOGUN 将軍』は、徳川時代で言えば、吉宗にあたる功績を上げた存在であり、今後の時代劇の方向性に大きな影響を与えるドラマである。本研究の協力者である撮影所の古賀博隆氏は、真田広之氏と旧知の仲であり、『SHOGUN 将軍』においても衣裳のプロフェッショナルとして現地に召集された人物で、その際の事柄を聞き取り調査することが決定している。また、真田広之氏のデビュー当時から殺陣をつけている撮影所の菅原俊夫氏からも今回ドラマの殺陣について考えるところを聞き取り調査する予定である。また、研究調査で培った知見を、神戸大学名誉教授で評論家・小説家の野口武彦氏が執筆中の歴史小説『幕末旅役者愚歩兵隊(仮)』に生かし、2024年度中に法藏館より刊行予定である。美術展示や歴史小説刊行といった、より多くの人々の目にとまる形での成果発信を行っていきたいと考えている。
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