研究課題/領域番号 |
20K00277
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
寿楽 浩太 東京電機大学, 工学部, 教授 (50513024)
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研究分担者 |
菅原 慎悦 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (70638006)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 予測 / リスク / 科学技術 / シミュレーション / 社会学 / 高レベル放射性廃棄物処分 |
研究開始時の研究の概要 |
現代の私たちはしばしば、科学的な知見に基づく「予測」によって、将来起こるかもしれない不都合な出来事による損害(リスク)を管理しようとします。天気予報はそのもっとも身近な例の一つです。そのことには多くの利点がありますが、他方で、「予測」の強みと不確実性をきちんと把握し、適切な用い方をしないと、個々人や社会にかえって災いをなす場合があります(「逆機能」)。本研究は、逆機能が生じる場面やその仕組みを特定し、それを防いで社会が「予測」をリスクとの向き合い方に適切に役立てる方途を明らかにしようとする、科学技術の社会学の研究です。
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研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の感染法上の「5類」への指定変更などを契機に、今年度は研究活動に係る制限がほぼ、撤廃され、過年度の遅れを回復する取り組みを進めることができた。具体的には、論文掲載、国際会議発表、聞き取り調査の再開などを進めた。 研究分担者の菅原准教授の論文は科学技術社会論分野のトップジャーナルであるSSS(Social Studies of Science)誌に論文を投稿し、昨年度中に受理されていたところ、今年度に入って掲載、出版された。また、研究代表者の寿楽と菅原准教授は同じく科学技術社会論分野の最も主要な国際学会である4S (Society for Sociel Studies of Science)の年次大会において連名で発表を行い、本研究の成果を含む議論を展開した。 技術システムのリスク評価や予測技術をその不確かさや限界をも含めてリスク・ガバナンスにどのように位置づけるかについても研究を行っている。その成果の一部は、リスク・ガバナンスの視角を原子力安全目標に反映させることを試みたもの(欧州リスク学会での口頭発表)や、リスク・ガバナンスの概念に関するレビューと日本におけるその展開に対する批判的論説を含んだ総説論文(リスク学研究の査読論文)として公表している。 加えて、年度後半からは研究協力者の松本三和夫東大名誉教授を交えて、科学的な「予測」の社会的逆機能が特に際立って浮き彫りになると考えられる高レベル放射性廃棄物処分問題を主な対象に、対面での聞き取り調査を再開した。同問題は、専門知を民主政治や市民参加との兼ね合いでどのように改めて位置づけ直すかという問いについて、2010年代以降のいわゆる「ポスト真実」の時代における意義や限界を考え直す上でも非常に示唆に富むテーマと考えられ、本研究に後続する次の研究テーマにつながるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」にも記した通り、過去3年間にわたって継続的に新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を大きく受け、かなりの遅延が生じたが、今年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大が鈍化し、法令上の扱いも緩和されたため、研究活動に係る制約も相当に弱まった。このため、対面形式での聞き取り調査の再開、国際会議・国内学会への対面参加のさらなる充実、RA雇用によるデータ処理・分析の効率化などを図ることができた。このため、進捗状況は過年度よりも改善したと考えている。 本研究課題は再度の1年間の期間延長を受けた。改めて設定された最終年度には「予測」の逆機能の批判的検討を理論的な展開に接続することも念頭に、かつ、同時に広く社会や実務家にも本研究の成果を還元するための出版・発表、アウトリーチを展開したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、研究会の対面開催、聞き取り調査の実施を特に前半で加速させ、遅れていたデータ取得を補いつつ、科学社会学の理論的展開への貢献も狙う後続の科研費研究課題の採択もなされ、当該課題の研究分担者との連携も強化されたことから、本研究のこれまでの成果の理論的な位置づけの検討も積極的に進めることとする。また、前年度後半からRA雇用を開始したことから、特にデータの取得・整理・分析の局面での効率化もいっそう推し進める。これらにより、研究計画の遅延を解消し、当初計画以上の成果を挙げることを狙う。 また、研究代表者が新型コロナウイルス感染症に係る科学技術社会論の国際比較研究に関する財団系の研究助成に共同研究者として参加している。当該研究の最終的な成果も上がりつつあるため、相乗効果により本件研究の加速につなげる。
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