研究課題/領域番号 |
20K00283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 日本福祉大学 (2021-2022) 畿央大学 (2020) |
研究代表者 |
小野 尚香 日本福祉大学, 福祉経営学部, 教授 (70373123)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 神経発達症群 / 支援システム / 保護者支援 / 幼児支援 / 専門職養成 / スウェーデン / 専門職研修 / チャイルドヘルスプログラム / 幼児 |
研究開始時の研究の概要 |
近年教育現場でも注目されている神経発達症群の子どもたちの支援のあり方について、スウェーデンにおける事例をもとに、日本においても導入できるようなアイデアを提唱したい。スウェーデンの実践の中でも、中部に位置するイェブレ地域にある、2つのブリガンと呼ばれる、就学前の子どもたちに焦点を当てた組織を研究の対象としている。 これらの組織の中における、専門職スタッフの養成の仕方、専門職スタッフの保護者に対する姿勢によって得られる効果、ブリガンが提供する研修と巡回指導の効果、およびブリガンが果たす社会的機能を明らかにする。 これらの結果をもとに、日本の教育・保育現場において導入できる支援について提案する。
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研究実績の概要 |
COVID-19感染症蔓延状況が長期間続き、2020年度からスウェーデン現地調査を行えなかったが、2023年2月には渡瑞し、ブリガンに対する現地での調査を進めることができた。一方で、オンラインによるインタビュー調査と、資料収集を継続した。研究対象は、神経発達症群の範疇の困難さがある幼児期(4歳~6歳)を対象とした、多職種連携による包括的支援組織ブリガンの「神経発達症群の支援を有機的に構成する専門職の資質能力と社会的機能に関する」内容であり、今年度、この研究において遂行できたことは次の①②である。 ①ブリガンを主導する医師と看護師、その他に対するインタビュー調査:ブリガンの医師と看護師に対する半構造化面接を通して、活動、組織の変化、経済面、来訪者の動向、専門職研修にわたって詳細な内容を聞き取ることができ、今年度は特に専門職の資質能力向上に向けた取り組みと、保護者のニーズについて調査ができた。しかし、ブリガンの支援を受けた保護者に関しては、オンライン調査では許可が下りず、子どもと保護者のニーズを少しでも把握するために、ブリガン以外に範囲を広げて、8名の保護者に対する半構造化面接を行った。 ②資料収集と翻訳作業:昨年度入手した資料(新聞記事と外部評価報告、2014年次報告と教育的マッピング)を翻訳し、2022年6月と12月発行の日本医史学会関西支部機関誌『医譚』に掲載され、さらに2023年6月発行に向けて印刷中である。また、現地調査やオンライン調査で、ブリガンスタッフから得た新しい資料(年次報告、外部評価、研修資料、行政資料等)も入手でき、翻訳作業を進めている。それらは、ブリガンの活動を経年的に整理し、ブリガンが専門職に求めた資質能力を把握する助けとなっている。 以上により、医療・保健・教育の多職種連携による、幼児期後期を対象とした包括的支援の様相がより明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染症蔓延のため、2020年度からスウェーデンにおける現地調査を行うことができなかったが、2023年2月には渡瑞し、現地視察やブリガンスタッフに対する半構造化面接を行うことができた。現地での対面調査では、オンラインでは得られなかった臨場感あふれる事例や、インターネットや添付ファイルでは得ることができない資料の収集が可能となった。現在、現地で得たインタビュー調査についてはテープ起こしと翻訳を、資料についても翻訳を進めている。 前年度から引き続いて、神経発達症群の範疇の困難さのある幼児と保護者を支援する組織ブリガンの医師や看護師(コーディネータ)にオンラインによる面接を行った。渡瑞前の約8か月で、昨年度に追加して、医師に対しては2時間×1回、コーディネータ兼務看護師2時間×6回の半構造化面接を行うことができ、組織の変化、財政状況、スタッフ研修の枠組みについて理解を進めることができた。 他のブリガンスタッフである特別支援教育指導教員、心理師、作業療法士、ソーシャルワーカー等にも依頼をしたが、オンラインでのインタビュー調査は不可能であった。この点については、今後、メールでの質疑応答をお願いする予定である。また、ブリガンの支援を受ける保護者についても、現地対面でのインタビューに対する了解を得ていたが、オンラインによる調査については不可能であった。そのため、ブリガン以外の保護者の協力を得て、神経発達症(ブリガンの対象で多い、自閉スペクトラム症ならびに注意欠如多動症等)と診断された子どもの保護者8名(子ども9名)の障害受容や必要な支援、また有用であった支援について半構造化面接を行った(倫理申請済み)。その結果、ブリガンの支援と保護者のニーズが呼応するものであることが見えてきた。 インタビュー調査と、特に現地調査で新しい資料を入手することができ、活動の詳細を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の方向性としては当初の計画と概ね変更はなく、研究目的も、対面調査や資料収集を基本とした方法も変わらない。COVID-19感染症に関する状況は不明瞭であり、スウェーデンを訪問しての研究は難しいことも考え、オンラインによるインタビュー調査を進める。 最終年であり、まず、これまでのブリガンスタッフならびに神経発達症と診断された保護者に対するインタビュー調査のテープ起こしならびに翻訳、また入手した資料(2015~2020ブリガン年次報告、ブリガンのアセスメント方法や専門職研修の内容等)の翻訳を進め、研究テーマに沿って内容を整理する。 また、ブリガンの医師や看護師に対するインタビュー内容、そして神経発達症と診断された子どもをもつ保護者に対するインタビュー内容についてはテキストマイニング分析を行い、研究テーマの視座から、その結果を考察する予定である。支援者側については、実施内容とその目的、重視した点と、どのような効果があったのかについて検討する。その結果から、ブリガンのスタッフについては、資質能力の開発の経緯と実際の活動内容、その社会的機能についての分析を行う。保護者に対しては、子どもに対する感情や接し方とその変化や子どもの障害受容、受けた支援の有用性や希望する支援について分析を行う予定である。以上を、学会や学会誌を通して、順次、発表する予定である。 また、ブリガンで使用しているアセスメントに関わる評価表、親教育(プリマス)については、翻訳をすすめ、日本版を作成することを目指す。また、日本との比較として、先行研究や、同様な経験を有する日本の保護者へのインタビュー調査との比較、加えて、医学・心理学の知見と支援との関係性、専門職役割、社会的機能を検討するために日本における近現代の実践者の理念や活動と比較し、社会背景や医学的知見の相違を超えて、共通する支援の社会的機能について比較検討を進める。
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