研究課題/領域番号 |
20K00287
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
袴田 光康 日本大学, 文理学部, 教授 (90552729)
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研究分担者 |
張 盛開 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (00631821)
金 孝珍 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20638986)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 名所 / 歌枕 / 庭園 / 詩跡 / 屏風歌 / 東アジア / 名所絵 / 国風文化 / 漢字文化 / 詩蹟 / 画題 / 寝殿造 / 和歌 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、10世紀前後の「国風文化」の形成期における寝殿造庭園と和歌文学の密接な影響関係に注目し、その相互作用の中で日本各地の「名所」のイメージが形成されていくメカニズムとその特性を解明することを目的とするものである。そのためには地名を詠み込んだ和歌や漢詩を網羅的に調査し、庭園と文学の関連性を明らかにするとともに通史的な視点から「名所」形成の意義を明らかにすることが必要である。加えて、東アジアの庭園文学との比較によって国風文化の意味を問い直すことも重要である。こうした観点から、本研究は「名所」形成の意義を東アジア的な広がりの中で考え、国風文化の特性についても新たな見地を提起していくものである。
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研究実績の概要 |
本研究では2021年度から2022年度にかけてテキストにおける地名(名所)の用例調査を進めてきた(2020年度は新型コロナの流行のため研究活動ができなかった)。研究対象としたのは、中国のテキストでは『全唐詩』、韓国のテキストでは『朝鮮実録』、日本のテキストでは『古今和歌集』である。中国テキストは研究分担者の張開盛、韓国テキストは研究分担者の金孝珍、日本テキストについては研究代表者である袴田がそれぞれ調査を行い、その調査結果を一覧表にしてエクセル・ファイルにまとめた。 2023年度は、それまで集めたデータ(約600例)について、詩作の時代・景観の種類(山・江・湖などの)・画題との関連(絵画のモチーフの有無など)によって分類する作業を進め、詩(和歌)と地名(名所)と絵画(画題)の関係について分析を行った。分類とその分析作業は、まだ完了しておらず、現在も進行中である。また、そのプロセスの中で、日本の名所屏風歌が極めて重要であることが明らかになったので、11世紀までの屏風歌における地名に関する追加調査を実施した。なお、2023年度は漸く海外出張ができるようになったので、中国の蘇州・韓国の慶州において古代庭園の実地調査を行い、それに基づき、三国間の庭園と詩歌と名所の関係について比較分析を進めた。 これまでの研究を通して、以下の点が明らかになった。(1)庭園に名所を再現する傾向は中国・韓国・日本の三国に共通する文化であり、東アジアの漢字文化圏の特徴と言える。(2)しかし、庭園に名所が再現された希少な現存の実例を見ると、中国では大規模で誇張された表現が多く、韓国では中国的神仙世界と名所の区別が曖昧で、日本では名所の特徴が象徴的な形で表現されるなどの差異も認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
理由の第一には、研究の初年度から2年目にかけて新型コロナの影響により、研究を進めることが困難であったことから計画全体が大きく遅れたことが挙げられる。第二に、計画していた中国・韓国の庭園の実地調査が困難であったことから、机上で行える用例検索などの調査が多くなったため、予想以上にデータの数が多くなった上に、研究の必要性から更に調査対象を屏風歌にまで増やしたため、それらの増加したデータの分類・分析に多くの時間を費やすことになった点があげられる。第三点目として、中国・韓国における庭園の実地調査が2023年度にようやく実施できたので、それを踏まえて改めて庭園における名所の再現という観点から庭園と名所の関係を国ごとにまとめる作業が生じたことが理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度末に中国・韓国の庭園の実地調査を実施したことを踏まえて、研究の期間を延長して、庭園における名所の再現性について調査報告をまとめる計画である。その上で、中国・韓国・日本の三国における漢詩・和歌を通した名所の形成の比較を行うことで、本研究の全体を総括していく。その最終的な研究結果については、これまでのデータ等も含めて、ホーム・ページを開設して、広く一般に公開していく予定である。
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