研究課題/領域番号 |
20K00290
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30515838)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 近世実録 / 近代初期 / 活字翻刻本 / 敵討 / 近世文学 / 実録 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、江戸時代を通じて大量に作られ流布した写本の近世実録(実録体小説とも。以下「実録」)の、未紹介・未調査本の発掘、調査、整理の作業を通じて、将来的にはデータベース化を見据えた実録の所蔵リストと解題を作成する。 また、この作業と合わせて、従来知られていない実録と、同時代他ジャンル文芸との影響関係を明らかにする。 このほか、近代初期に活字翻刻本として刊行された実録の刊行状況を調査、その内実を解明していく。
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研究実績の概要 |
今年度の具体的な実績は、一つは徳川家康と織田信長による、いわゆる「清須同盟」と呼ばれる事跡について、近世及び近代初期・中期の文献を調査した。その結果、近世前期の段階では「清須同盟」についての具体的な記事は見出せず、近世前期に成立した『三川記』が、「清須同盟」の話の素地となるようなものが見出せ、それよりやや後に作られたと目される『三河記』において、「清須同盟」が形成されていることが判明した。さらに幕府編纂の徳川創業史『武徳大成記』では『三河記』を踏まえつつ記事の選択を行い、「清須同盟」伝説が発展・定着をみせたことがわかった。なお、『武徳大成記』編纂にあたり各家に提出させた由緒書(「貞享書上」)において、植村家が植村家政の「清須同盟」時における活躍を記していたため、この逸話も『武徳大成記』に採用されることになり、その後近代まで広く読まれた『常山紀談』や、さらに大正期の少年向けの伝記にまで取り込まれていることが明らかになり、「清須同盟」の別の側面も歴史として定着していったことを確認することができた。これらの成果は『家康徹底解読 ここまでわかった本当の姿』(共著)の1章として報告した。 また、「崇禅寺馬場の敵討ち」にまつわる実説・実録・活字翻刻本について、国文学研究資料館や京都府立京都学・歴彩館、九州大学附属図書館などへの実地調査および資料収集を行った。これらの結果(まだ調査は途上にあるが)、近代初期に刊行された「今古実録」シリーズ『敵討崇禅寺馬場』が元にした実録写本を特定することができ、また、「崇禅寺馬場の敵討ち」を扱った実録が、それほど多くは残っていないものの、それぞれ内容が異なり、複雑な本文系統を持っていることがわかった(本文系統の整理については今後の課題である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染状況および本務のスケジュールとの兼ね合いで、2022年度の出張調査を見合わせたことが複数回あったこと、また、研究室移動につき、研究の遂行に必要な資料を整理する棚の購入を検討したが勤務先から認められず、その相談に時間を要したことと、棚が不足しているため資料の整理が進まず、結果として作業の遅れの一因となったことなどが、理由として考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度については、新型コロナ感染症が5類に引き下げられたことから、資料調査の地域を拡げていきたい。そのいっぽうで、研究初年度よりコロナの影響のため研究遂行に遅れが出ていたことでもあり、とくに近代初期の活字翻刻本の調査収集については、対象を網羅的に広げるのではなく、実録の扱っている題材あるいは個別の出版社等に絞るなど、範囲を限定した中で、近代初期活字翻刻本実録の特徴を明らかにしていきたい。 この他、今年度中にある程度調査をしていた「崇禅寺馬場の敵討ち」を扱った実録については、未調査のものの調査を続けていく。
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