研究課題/領域番号 |
20K00298
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
小林 ふみ子 法政大学, 文学部, 教授 (00386335)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | 蒙求 / 魚屋北渓 / 臥竜園梅麿 / 国学 / 土佐日記 / 本朝孝子伝 / 古言梯 / 後奈良院御撰何曾 / とりかへばや物語 / 在外資料 / 北渓 / 辰斎 / 俊満 / 狂歌 / 漢学 / 和学 / 摺物(一枚刷) / 浮世絵 |
研究開始時の研究の概要 |
江戸狂歌の資料の中で、知識・教養を背景として詠まれたことがもっとも端的に把握できる作品群として、グループ(連・側)ごとに正月に向けて競作された揃物の摺物(一枚刷)の主題の広がりを把握する。従来、図録のかたちで公表されている大型コレクションおよび自身がこれまで調査してきた資料にくわえて、近年アクセスが比較的容易になった永田コレクション、また未見の海外の大規模コレクションを調査して、できるかぎり全容の把握に努める。そのうえで、特徴的な例を和漢それぞれからとりあげて、その理解の深度や関心の由来や背景を探る。また、その特徴や傾向について、作者たちの身分階層的属性がどの程度見いだし得るかを検討する。
|
研究実績の概要 |
今年度は、和漢の典籍のうち漢学系の主題の揃物を分析した。狂歌摺物では、錦絵でも主題となっている中国明代の白話小説『水滸伝』『三国志演義』が少なからぬ揃物に取りあげられているほか、「二十四孝」、竹林の七賢、杜甫の詩に基づく「飲中八仙」『列仙伝』などによる仙人を主題とする揃物が制作されている。 今年度、とくに注目したのは、天明狂歌の雄朱楽菅江門の狂歌判者臥竜園梅麿門下の町人の狂歌グループが北斎門人魚屋北渓の絵を添えて文政4,5年(1821-22)頃に刊行したと考えられている「蒙求」シリーズである。さまざまな所蔵機関に計14図があることが判明した。 『蒙求』は中国、唐代に子どもの学習のために古人の逸話をその名を含む4字句で表し、似た故事を一対にして計596句として編まれた書物で、近世日本では漢文による注釈書や訓読が刊行され、漢詩人たちの基礎教養となったことが知られる。とはいえ、漢詩、漢学の方面で事績が知られない町人の狂歌連中にとってどれほどなじみのある書物であったかは必ずしもあきらかではない。 全14図の分析によって、(1)取りあげられている主題は、太公望や西施をはじめとして実は『蒙求』以外でも近世日本人にとってなじみ深く、くり返し図像化されたもの、少なくともいわゆる和製類書類で知られた名が多く、狂歌においても『蒙求』の逸話の理解を前提としないものが少なくないこと、(2)一方で少数ながら、ほかならぬ『蒙求』本文に即して考案されたとしか考えられない主題も取りあげられていることが判明した。『蒙求』は漢詩人にとっては初学書として位置づけられるが、漢学を身につけたとはいえない、大衆的な狂歌人からみた距離感を探り得た。 この分析の成果は、ジュネーブのThe Cabinet d'Arts Graphiques所蔵の摺物コレクションの図録において英訳されて刊行される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに収集した摺物図像によって上掲の分析を行い、あるいは、パリのレスコビッチ・コレクション蔵品など提供を受けた揃い物摺物の図像に基づく分析は進めているが、新たな作品調査ができていない。そのため揃物摺物の主題の全体像の把握のためのデータ化に着手できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
23年度は、島根県立美術館永田コレクションなど、これまで実施できていない新たな摺物コレクションの調査を行いたい。またパリのレスコビッチ・コレクションについては調査研究、および図録・展覧会を具体的に計画を進めており、今年度の主要な課題となる。 揃物狂歌摺物を対象とするシンポジウム実施の企画を開始する。
|