研究課題/領域番号 |
20K00299
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
金 孝珍 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20638986)
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研究分担者 |
牧野 淳司 明治大学, 文学部, 専任教授 (10453961)
袴田 光康 日本大学, 文理学部, 教授 (90552729)
堂野前 彰子 (岡本彰子) 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (50588770)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 龍宮 / 水府 / 龍宮訪問譚 / 志怪 / 伝奇 / 東アジア / 漢字文化圏 / 比較 / 日中韓比較文学 / 比較文化 |
研究開始時の研究の概要 |
「龍宮」は、インド発祥の仏教が中国に伝わった際、目に見えない想像の水中世界を表現する語として漢訳されたものである。それは中国に伝来した後、唐代になると仏教文学だけでなく、伝奇文学の中にもよく登場するようになった。そして隣国の朝鮮と日本にも「龍宮」のイメージが伝わり、受容と変容を重ねながら諸文学作品に展開した。 本研究は人と文物が行き交う環境にあった漢字文化圏の日中韓において、龍宮訪問をモチーフにして形成された文学作品中、志怪・伝奇類に焦点を当て、龍宮という空間に対する概念と認識が各時代の思想と習合し、どのように推移していくのかを分析する。
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研究実績の概要 |
仏教説話をはじめ、龍宮を舞台とする伝承、文学作品が中国から韓国と日本に伝わり、その影響のもとで、龍宮のイメージも形成された。日韓ともに龍宮をめぐる仏教説話や中国の文学作品の受容により、龍宮は非常に親しい世界となっている。インドの説話文学や漢訳経典を源泉とする「猿の生肝」の話は、日韓ともに龍宮と龍王、龍女が登場する話に変容している。そしてさらにそれぞれの国の状況に合わせて、日本では動物の形状の由来に重点が置かれ、韓国では政治的状況を比喩する話として展開していくことになったのである。 日韓の「猿の生肝」譚が龍宮を舞台として展開した背景や経緯、またそれに伴う主題の変化について考察し、それを「日韓における龍宮訪問譚の展開―「猿の生胆」譚を媒介として―」(『古代学研究所紀要』(32))にまとめた。 「海幸山幸神話」の世界を描いた絵巻『彦火々出見尊絵巻』は後白河院の絵巻工房で制作され、当初は後白河院の蓮華王院に籠められていたとするのが有力である。さらに当絵巻は、記紀の原点から離れて新たな物語として再構成されているが、記紀の変容点をみると、絵巻を制作した後白河院の権力護持と密接にかかわっていることが容易に想像できる。 また、『彦火々出見尊絵巻』には中世の人々の龍宮に対するイメージが絵画としてよく表現されている。『彦火々出見尊絵巻』に描かれた龍宮の人物らの絵をみると、仏画を取り入れながらも新しい世界観を生み出している。特に魚貝形の冠をつけた人物描写の手法はこの絵巻が初見であり、これらの手法はそれ以降の絵巻や江戸時代の挿絵などに多く見られ後代に受け継がれていたことがわかる。『彦火々出見尊絵巻』に描かれた龍宮世界と後白河院の当絵巻制作の意図について発表を行った(第12回 明治大学・高麗大学校学術交流行事(於:明治大学))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年度予定していた中国の洞庭湖・西湖のフィールド調査と伝承資料調査ができないままで、また、2021年度は韓国にフィールド調査に行き龍宮訪問譚関連資料の調査や龍宮関連寺院の縁起物を調査する予定でいたが、新型コロナウイルス感染症の状況が好転せず、2022年度もできなかったため、全体的に研究がやや遅れている。フィールド調査以外の文献調査はおおむね順調に進み、いくつかの論文はまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
この研究は当初2022年で研究をまとめる予定であったが、新型コロナウイルス感染症のため海外のフィールド調査がまったく行えなかった。そのため1年延期することになった。今年度は過去3年間に実施できなかった海外フィールドワークを夏休みと春休み中に実施する予定である。文献資料の調査・分析、およびフィールド調査の結果を踏まえて、今年度は研究課題を全体的にまとめていく方針である。
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